旧線たけだお

(1982年3月撮影)

福知山線の宝塚以北が単線非電化の頃です。
と言っても宝塚まで複線電化されたのも、ついこの1年ほど前のこと。
特急「まつかぜ」、急行「丹波」「だいせん」などの気動車列車のほか、大阪・尼崎方から宝塚を越える普通列車の大半は旧型車両を連ねた客レでした。
大阪発出雲市行や米子行、浜田発大阪行などという長距離鈍行が懐かしいですね。

旧線の生瀬-武田尾間は路盤やトンネル、橋梁などがほぼそのまま残されて、自己責任を原則としたハイキングコースとして一般開放されました。
現在の武田尾駅は旧駅から約400メートル上流側にあり、トンネル内と橋梁上にまたがるちょっと珍しい形態の駅となっています。

新線の建設工事がスタートした頃、写真を撮りたくなって武田尾を訪れました。
いつものごとくポケットカメラの劣悪画質ですが・・・

武田尾ホームから福知山方を見る

色あいが良くなかったので画像ソフトで加工したら、昔のテクニカラー映画みたいな風合いになりました(汗
機関車が停まっている先に進行現示の腕木式信号機が見えますでしょうか。
当時の宝塚以北は連査閉そく式で、武田尾のほかいくつかの駅に腕木式が残存していました。

上り場内信号機
上り出発信号機

上の写真ではわかりにくいですが、出発信号機の腕木の回転軸部分には信号復帰器が設置されています。発車した列車が出発信号機付近の軌道回路を踏むと、進行現示(反位)の腕木が自動的に停止現示(定位)に戻るという機構です。
連査閉そく式のように通票を使用しない閉そく方式の線区で、発車後に信号を定位に戻すことを失念して反位のまま放置された場合、後続の列車がそれを進行現示と勘違いして発車してしまうことを防止するためのものです。
信号復帰器は出発信号機特有のものと思っていたら、場内信号機に附設の通過信号機にも設置されていたそうで、列車が発車すると出発信号機と通過信号機が同時に定位となります。

ちなみに、信号復帰器が作動した後は「腕木が定位、信号てこが反位」という通常あり得ない状態となりますが、信号てこを定位に戻して閉そく取扱いを行えば鎖錠が解け、再び信号機を反位とすることができるようになります。

大阪行の鈍行が発車して行きます。

こちらは福知山方面への列車。
写真原版では、3両目の所属標記がかろうじて「福フチ」と読めます。

駅を出て正面にある武田尾温泉への橋を渡って、武庫川沿いにしばらく三田方面へ向いて歩くと、良い撮影スポットがいくつかありました。

急行「丹波」でしょうか。
この線路跡はクルマの通れる一般道として整備されています。

駅の三田方にあるこのトンネルは今も道路トンネルとして活用されており、ストリートビューで見ると今でもあまりにもそのまんまなので驚きます。
現在、このトンネルは途中で90度折れ曲がって外に出るようになっていて、出口まで通り抜けることはできないようです。

線路はトンネルを出ると武庫川を渡ってすぐ次のトンネルに入っていました。
次の写真のアングルは私が最も気に入っているもので、たしか同様の角度からの映像が、武田尾温泉組合?か何かのCMでサンテレビで流れていた気がします。
そのときに映っていた列車は「まつかぜ」でしたが…

三田方のトンネルから出てきた普通列車
このすぐ上流側(後方)では新線建設工事が行われていました

当時の武田尾温泉には数軒の旅館がありましたが、一部は水害や堤防工事により廃業となり、現在は山間部の元湯と現駅近くの旅館の2軒が営業しています。