ミニ周遊券

国鉄からJR初期にかけて販売されていた「均一周遊券」。
均一周遊券は鉄道・バス等が乗り放題の自由周遊区間と発駅からの往復がセットになったきっぷで、このブログでも北海道周遊券など自由周遊区間の広い「ワイド周遊券」をいくつか扱ってきました。
均一周遊券のコンパクト版「ミニ周遊券」についてはこちらのページでも少しだけ触れていますが、今回はその実例を、年代の古いもの順にいくつかご覧いただきます。

均一周遊券の基本形はA券・B券の2枚組で、A券は発駅から自由周遊区間内までの往路券、B券は自由周遊区間内の乗り降り及び復路券という構成です。A券はB券が伴っている場合のみ有効で、自由周遊区間内で最初に下車した駅で回収されます。
往復路・自由周遊区間ともに急行列車自由席が利用可能(ワイド周遊券は自由周遊区間内のみ特急列車自由席も乗車可)という、乗り鉄的にウハウハの超乗り得きっぷでした。

といったところで、まずは鳥取・三朝ミニ。私が高校生の時に使ったものですが、急な旅行で学割証を取るいとまもなかったのか、所定価格で購入しています。
このころは「みまさか」「みささ」「砂丘」「但馬」などの急行列車が多く走っていて、ミニ周遊券も使い甲斐がありました。


「山守」はのちに廃止となった倉吉線の終着駅です。自由周遊区間が簡素というか質素というか、乗り鉄向けというよりは本当に鳥取や三朝温泉(倉吉)への旅行に特化したようなきっぷでした。山陰ワイドではなぜか無視されていた若桜線(現・若桜鉄道)もちゃんと区間に入っています。
大阪市内から自由周遊区間への経路は東海道(京都経由)山陰、福知山+山陰、山陽+播但+山陰、山陽+姫新+因美の4種類が設定されています。

かつてはこのような表紙に綴じ込まれていてフツーのきっぷにない特別感があったのですが、のちに表紙は廃止されてしまいました。

つづいて山口・秋芳洞ミニ。
珍しくA券・B券セットで保存されていました。これはちゃんと学割で購入(笑
さっきの鳥取・三朝ミニもですが、四隅にレールの断面のようなマークが配されちょっと格調高い?デザインとなっていて、意外にもこれはワイド周遊券の券面にはない特徴です。

益田-仙崎間以外は山陰ワイド周遊券で乗れない路線がカバーされており、ミニとは言うものの「山陰・山陽西部ワイド周遊券」とでも命名したいぐらい自由周遊区間が充実していますが、小郡(現・新山口)・秋芳洞間の直通バスが対象外というのはちょっと看板に偽りアリかなという気はします。秋芳洞へ行くなら山口駅や美祢駅など列車で行けるところまで行ってからバスに乗れということなのでしょうか。

大阪市内発の往復経路は東海道+山陽(呉線・岩徳線を含む)のほか福知山+山陰が認められており、当時まだ多く走っていた急行や長距離鈍行で山陰本線の大半をのんびり辿るのにも適したきっぷでした。
上記のとおり東方面からの往復経路は呉線と岩徳線も経由可能ですが、面白いことに九州ワイドなど九州内に設定された均一周遊券の経路もことごとく呉線・岩徳線経由可となっていて、この両線と山陽本線との間の歴史的経緯が垣間見えるのは興味深いところです。

B券面に花形に「ほ」と記した刻印がありますが、これはかつての車内改札で車掌氏が使用していた検札鋏の入鋏痕で、これもJR移行後まもなくスタンプ式の検札印に取って代わられました。中の文字は車掌区によって異なっていたようです。

平成年代に入ると均一周遊券も徐々にマルス発券となっていきます。
次は鳥取・浜村ミニ。さてみなさん<それは浜村淳

1985年5月号時刻表から

自由周遊区間が最初の鳥取・三朝ミニとダダ被りやん・・・と思ってしまいますがそれもそのはず、鳥取・三朝ミニの生まれ変わりというか後進のきっぷです。倉吉線と国鉄バス美伯線三朝温泉行が廃止となって「三朝」を名乗りづらくなったので、付近の浜村温泉を引っ張り出してきたものでしょう。
が、失礼ながら三朝温泉と浜村温泉は規模・知名度ともに段違いで、浜村温泉というより単に鳥取や倉吉へ行くのに便利なきっぷという使われ方が多かったのではと思われます。

さて、名古屋発の経路①を見てください。こんな珍妙なルートで名古屋から鳥取方面へアプローチする人が本当にいたのか不思議に思えますが、当時まさにこのルートを走っていた名古屋・大社線大社間急行「大社」のための経路設定であることは間違いありません。
てか、そもそも「大社」がなぜそんなルートを走っていたのかも不思議なんですが、そのような輸送需要があったからこそなんでしょうとしか言いようがないですね。故・宮脇俊三翁「最長片道切符の旅」にも出てくる名?列車です。

次は東京ミニ。これもなかなか便利なきっぷでした。

ミニ周遊券としては珍しく自由周遊区間に新幹線(東京-新横浜間)が含まれています(別途特急券が必要)。
現在これとほぼ同等のきっぷとして「東京フリー乗車券」「首都圏週末フリー乗車券」などがありますが、発駅がJR東管内の主要駅に限られてしまい有効日数も2日間となりました。もちろん東海道新幹線は利用不可です。
東京ミニなら、たとえば1985年5月現在の大阪市内発ですと横浜市内への往復運賃14,800円プラスわずか400円でこれだけの路線に、しかも往復含め7日間も乗れたのですから使わない手はないというものです(ついでながら東海道線「東海」などの急行列車も往復経路及び自由周遊区間内なら乗車可)。

最後に広島・宮島ミニ。
これまでワイド周遊券もミニ周遊券も券面表示は「○○周遊券」だったのが、いつからかワイド、ミニの文字が入るようになります。

これも自由周遊区間に新幹線(広島-新岩国間)と宮島航路を含んでおり、とくに航路を含む均一周遊券はこれが唯一だったはずです。
広島駅を起点に国鉄バスが呉駅(安芸線)、可部駅(広浜線)へと走っていたのが今となってはちょっとした驚きでもあります。岩国駅・新岩国駅から錦帯橋へは国鉄バス岩益線が通じていましたが、これも現在は岩国市100%出資のいわくにバスに移管されています。
可部線可部-三段峡間は2003年12月に廃止となりましたが、廃止区間の可部-河戸間を含む可部-あき亀山間が電化のうえ復活したことはご承知のとおりです。

と、ここで締めるつもりが、裏面を見てみたら


スタンプを捺すところがなかったのでしょうが、若い頃はやることが雑で自分でも呆れ果ててしまいます(今も雑なヤツですが・・・