硬券畏る可し 〜私鉄編2+超硬券〜

硬券シリーズ最終回は大井川鐵道(金谷-千頭-井川間)からスタートです。

券の地紋は一般的な「JPR てつどう」などではなく、社章をあしらったオリジナルデザインです。

大井川鐵道では企画乗車券以外は今も硬券がデフォルトで、蒸気機関車や他社からの譲渡車両などとともに同社の貴重な観光資源です。

下は平成2(1990)年、青春18と併用して券を手元に残すために購入したJR連絡きっぷ。
大鉄では2014年の消費税増税時に、JR連絡きっぷを硬券から手書き補充券での発行に切り替えていましたが、硬券復活を求める声が多かったためその数年後に硬券のJR連絡きっぷが復活しました。
現在は、東京都区内行の硬券で新幹線に乗ろう!というキャンペーンまでやっているようです。
2022年9月の台風被害で今なお一部運休が続いており、早期の復旧を祈るばかりです。

三岐鉄道では、三岐線(近鉄富田-西藤原間)の有人駅で硬券が売られています。
ナローゲージで名高い北勢線(西桑名-阿下喜間)の方は、近鉄から三岐鉄道への移管後に磁気券の自動券売機・自動改札機が導入されていますが、有人駅では窓口で頼めば硬券の入場券が買えるようです。

余談ながら、三岐線は各交換可能駅の場内信号機と出発信号機がR(停止)とG(進行)の2位式なので、交換駅を通過する貨物列車のための通過信号機が場内信号機の下位に設置されています。→よんかくチャンネル「通過信号機」

お次は明知鉄道(恵那-明智間)のJR連絡きっぷ。「恵那経由」とありますが恵那駅しか経由しようがないんですけど(汗
ここも券の地紋はオリジナルです。日付がダッチングマシンではなく普通の日付印なのが珍しいですね。

ところで、岐阜県美濃地域には美濃太田駅、美濃赤坂駅など「美濃」の付く駅がいくつかありますが、美乃坂本駅だけ「美乃」なのが不思議です。
Wikipedia「美乃坂本駅」によると、駅設置にあたり地元住民がしばしば「美濃」を略して「美乃」と書いていたためそれを駅名に取り入れた、とのことですが、それなら「美濃」が付く他の駅もそうやろうに…と、この駅名を見るたびに某育毛剤を連想するよんかくは思うわけです。

次も同じく美濃国にあった名鉄谷汲線(黒野-谷汲間・2001年10月廃止)。

一番下の北野畑駅は普段は無人駅なのですが、列車が増発される谷汲山華厳寺命日(毎月18日)には当駅で列車交換が行われるため、通票を扱う駅員氏が詰めていました。
なので、きっぷの販売は通票扱いのついでというか副業みたいなものだったのでしょう。

さあ、次いってみよー(故・いかりや長介氏ふうに

この紀州鉄道(御坊-西御坊間)も硬券が現役バリバリです…とは言っても、購入できるのは唯一の有人駅・紀伊御坊駅だけ。一番下はJR 連絡券で、道成寺駅は紀勢本線御坊駅のひとつ新宮方の駅です。
なお、今まで触れていませんでしたが小児断線部の上に開けられたパンチ穴は、小児断線で切り取られた券片(小児断片)をひもに通して保存しておくためのものです。

紀州鉄道のお隣りさん、有田鉄道(藤並-金屋口間・2002年12月廃止)の往復きっぷ。
平成13(2001)年当時には高齢の運転士1人しかいない「究極のワンマン運転」となり、その運転士氏の退職すなわち路線廃止という限界状況の中、同年11月に施行された1日2往復(土日祝運休)の超減量ダイヤが事実上の廃止予告宣言となりました。

硬券の往復きっぷは通常、上田電鉄のように往路券と復路券をミシン目で切り離すようになっていましたが、この券は中央部に社章を配したレイアウトからして、実際の乗車用というより記念購入用を意図して作られたような感じです。乗車券類は本社のある終点・金屋口駅のみで発売されていました。
しかし有鉄に「オレンジライン」なる愛称があったとは、このきっぷを買うまで存じ上げませんでした。確かに一面のみかん畑の真ん中を走る区間があったのでむべなるかなという気はしますが。

ちなみに大昔、往復券が常備されていない区間の往復きっぷを窓口で買い求めると、通常の片道券2枚にそれぞれ「ゆき」「かえり」「有効期間は片道の2倍」などのスタンプが捺されて出てきた記憶があります。

さて、次のきっぷはどこの会社のものでしょうか?
まず「周匝」という駅名が難読です。

かつて岡山県備前市の片上と硫化鉄鉱山があった柵原(やなはら)を結ぶ同和鉱業片上鉄道の周匝(すさい)駅発行のもので、周匝から340円区間は山陽本線接続の和気駅までです。
券の地紋は自社オリジナルの「かたかみてつどう」でした。入場券は需要がほとんどないためか汎用的な券面に駅名スタンプを捺したものですが、廃止(1991年6月)直前には入場券の売り上げも激増したのではないでしょうか。
この昭和54(1979)年当時は貨物輸送による収入が多かったこともあって旅客運賃水準は低く、入場料金40円も国鉄入場料金100円に比べて破格の安値でした。

ここからはやや番外編となります。
宮城県を走っていた栗原電鉄(石越-細倉マインパーク前間・くりはら田園鉄道を経て2007年4月廃止)、その本社と車庫があった若柳駅から各駅行の旧券セットで、三セク化後のくりはら田園鉄道に乗りに行った際に購入しました。

券の地紋を見ていると面白いことに気づきました。
栗原電鉄の地紋は一般的な「BJR じどうしゃ てつどう」なのですが(こちらの記事参照)、唯一杉橋駅行の券だけ「TTD」という、これまでに見たことがないパターンです。

「BJR」はBus、Japan、Railwayの意と思われますが、この「TTD」とは何でしょうか。
「てつどう TETUDO」とあるので、まさかTETUDOの略でTTD・・・というのは安易かなと思いましたが、ネットで調べるとどうもその安易なのが正解のようです(汗
このセットの他の券がすべて「BJR」なのにこの券だけ「TTD」というのも謎です。券の納入業者が変わったりしたのでしょうか。

さらに興味深いのは右上の「列車運行図表」で、右端に閉そく方式と通票種別が記載されています。
これだけでも十分な値打ちがあります(←きっぷはどこへ行った?

 

さて、ここからは反則技の「超硬券」です。
信楽高原鐵道の「さる年親子キップ」。
信楽焼なので硬いです。もはや「券」ではありません。叩けばコンコンと音が鳴ります。

この厚みですから少々高いところから落としても簡単には割れないと思います。
その代わり、かなり重たいです(笑

乗車の際にはまさか入鋏はできませんから、日付印でも押捺するのでしょう。車内の料金箱にも入らない困ったきっぷです。
なお、同社では毎年エトにちなんだ信楽焼の乗車を販売しています。

最終兵器はこちら。
かつて個人FBページにも掲載しましたが、落としても絶対割れない、ゾウが踏んでも壊れない(←古)、真鍮製の秩父鉄道タブレット乗車券です。

レプリカのタブレットに改札印・日付印押印欄を貼り付けただけのシンプルさです。
実物より若干直径は小さいものの非常に精巧なつくりで、ただ秩父鉄道のロゴマークが今風です。

これで実際に乗車した人はいたのでしょうか、いや、きっといるはずです(確信)
しかし仮にこれで乗車したとしても、こんな邪魔なモノが下車駅で回収されるとは到底思えません。

まさに(超)硬券おそるべし。
こんなネタでしたが最後までご覧いただきありがとうございました。