美作のくに 鉄道資料館めぐり 後編
(2023年5月7日撮影)
「津山まなびの鉄道館」訪問後、親戚宅での所用を済ませて美作市内で一泊し、もうひとつの鉄スポットである旧・同和鉱業片上鉄道吉ヶ原駅に行ってきました。
ここは現在「柵原ふれあい鉱山公園」内の施設となっていて、片上鉄道保存会の皆さんが行なっている片上鉄道の車両と施設の保存・維持活動の拠点でもあります。
昨夜から朝にかけて大雨で、天気が良くありません
吉ヶ原駅から柵原方に約400メートルのレールが伸び、その先に黄福柵原(こうふくやなはら)駅という車両展示施設があります。かつては毎月第一日曜日に両駅間で展示運転が行われ一般客も乗車できましたが、緊急事態宣言を機に中止となって以来再開されていません。
コロナ5類移行間近となったこの日、一縷の淡い期待をもって訪れましたが、運転どころか駅舎内にも人影がまったくありません。
ただ、駅構内には自由に立ち入ることができるので、しばし見学します。
黄福柵原方を望む
構内を彷徨いているうちに見学客が少しずつ増えてきて、なんとか鉄道駅らしくなってきました。
この旧・吉ヶ原駅を訪問するのは2回目で、最初の訪問時の様子をこちらに掲載しています。
「片上鉄道のブルートレイン」ことホハフ2004は青一色に塗り替えられ、機械式気動車キハ702と手を組んでいます。
ホハフ2004車内を窓の外から
ホハフ2004の車内は壁も床も木製で、座席の形状はまさに「直角の椅子」です。
テーブルや灰皿も残っていて、現役時代そのままに近しい保存状態です。
吉ヶ原駅西側の旧踏切を渡って、2014年11月にオープンした黄福柵原駅へ向かいます。
踏切警手小屋があり、遮断機昇降ハンドルも見えます。よんかくの子どもの頃は阪和線のような過密路線でも道路幅の広いところには手動踏切が残っており、渡る人が多い時は警手さんが遮断機を人の高さぐらいのところで止めて全員渡り終えるまで待っていてくれたものです。
黄福柵原駅の駅舎には鍵がかけられ、こちらにも人影がありません。
柵原駅・吉ヶ原駅などのトンガリ屋根の洋風駅舎をイメージ
展示車両がDD13551・キハ303・キハ312の3両。
各地に雨ざらしの展示車両が多い中、屋根が架けられているのは嬉しいですね。
車内を見学できないのは残念ですが外観を見ることができるだけでも感謝すべきでしょう。
キハ312の窓のわずかな隙間から
私は片上鉄道の現役時代に柵原・片上間を3回ほど乗り通しているのでこの車両にも乗っているはずで、これこれこの座席!と思わず声を上げてしまいました。
国鉄キハ07系〜10系に準じたと思われる座席は背ズリが低く、後ろの人と後頭部が当たってしまいます。座席幅も狭く、現代人の体格では2人並んで座ると通路側の人はお尻がはみ出るでしょう。
窓の日除けは鎧戸で、今では阪急電車の一部車両ぐらいでしか見られません。
吉ヶ原方には保線車両らしきものが展示(留置?)してあります。
黄福柵原駅も立派な施設なのに、今は特に活用されていないようです。
保存車両の状態が思いのほか良かったのが印象に残りました。
津山のように企業や法人が運営しているところと違って、片上鉄道保存会の方々は本業を持ちながらの地道な活動であるところ、コロナによるブランクがとてつもなく大きな障壁となってしまったように感じられます。
この3年あまりのあいだ、我々の普段の生活の中でも止まってしまったもの、やめてしまったもの、見失ってしまったものがいかに多いか、そんな思いを噛み締めながら家路につきました。