ピンチ!?長崎本線の信号場

タイトルからお察しいただける方もおられるでしょうが、本当にピンチかも知れません。

ご存知のとおり、昨年2022年9月23日の西九州新幹線開業によって、江北駅(元・肥前山口駅)以西の長崎へのメインルートが長崎本線から佐世保線+新幹線に取って代わられました。
並行在来線の長崎本線は上下分離方式でJRによる運営が維持されたものの特急「かもめ」がなくなり、普通列車も折からの減便傾向にある中、線内にある里、土井崎、肥前三川の3信号場が「暇な信号場」となってしまいました。

下は「かもめ」が走っていた当時の2018年2月1日現在の長崎本線肥前鹿島-長崎間ダイヤです。
なお、水色部分(諫早-喜々津間、浦上-長崎間)は複線区間で、長与経由の列車はここでは省略しています。黒線は普通、青線は快速、赤線は特急です。

信号場によって多い少ないはあるにせよ、列車交換や待避など一応は「信号場らしく」稼働しています。
特筆すべきは諫早-長崎間で、よくまあここまでスジを詰め込んだなぁと唸らせる神技のようなダイヤ組成で、この区間内にある肥前三川信号場もトンネル内というハンディをものともせず、果敢に列車交換を扱っています。
おそらく、全国の単線区間の中で最も列車密度が高い区間だったのではないでしょうか。

下の動画は西九州新幹線開業前の、現川駅を出て肥前三川信号場を通過するまでの様子です。光量がないので画像がかなり粗いですが、分岐を渡って信号場構内の複線区間に入ると列車の走行音が変わるのがわかります。

現川駅出発→肥前三川(信)通過 2020/11/22

 

そして西九州新幹線開業から半年経過した今、時刻表2023年3月ダイヤ改正号をもとに同区間のダイヤを引いてみたのが下図です。
なお、新幹線開業とともに肥前浜-長崎間が「非電化」化され、全列車が気動車による運転となっていますが、電車と比べて特段スジが寝ている(列車速度が低下している)印象はなく、むしろ交換や待避が減った分、表定速度が上がっている列車もあるようです。

始発から15時台までは、各信号場とも列車交換が行われていません。
「かもめ」のために存在していたような里信号場と土井崎信号場はともかく、都市近郊区間で八面六臂の大活躍だった肥前三川信号場ですら交換がなくなっていますが、肥前三川とてほとんどの列車交換は「かもめ」絡みだったので、やはり赤い線の威力というのは相当なものだったとつくづく痛感させられます。

続いて後半の23時台までの分です。

結局、3信号場とも列車交換も待避も全く行われなくなっていました。駅でも列車交換がなくなっているところがいくつかあります。
土井崎信号場は、信号設備上の都合で折り返しができない小長井駅終着列車の折り返しを行っていることから、ここだけは(今のところ)存在理由があります。この土井崎信号場はJR九州本社鉄道事業本部と長崎支社の管轄境界でもあります。
一方、里信号場は有明海に面した大カーブ上にあってその車窓風景は長崎本線屈指で、ここで交換待ちをしているとカーブの向こうから対向列車がやってくるのが見えたものです。「かもめ」同士の交換が日に数回行われるなど列車交換頻度の高い信号場でもありました。

ところで、新幹線並行在来線上にあって処遇が懸念された信号場に赤瀬川信号場(肥薩おれんじ鉄道/元・鹿児島本線折口-阿久根間)があります。ただ、こちらはJRからの分離後も少ないながら旅客列車同士の交換が残り、他にも貨物列車がらみの列車交換があり得ますが、長崎本線の場合は貨物列車がないのでほぼ上記スジどおりの運行、つまり列車本数がよほど増えない限り信号場は不要という結論になってしまいます。
また、同じ元・鹿児島本線の初野信号場は、九州新幹線開業とともに肥薩おれんじ鉄道新水俣駅へと華麗なる?転身を遂げ、並行在来線上の信号場でも明暗を分けた形となりました。

現在のところ長崎本線の3信号場が廃止されるとのアナウンスはないようですが(まぁ普通は信号場廃止の発表などされないとは思いますが)、行く末については全く予断を許さない状況に変わりありません。
もっとも、信号場の行く末など気にしているのは、鉄道愛好家の中でも非常に限られた層なんでしょうけど(汗