須磨浦公園のカーレーター

今や全国唯一の乗り物?となってしまった「カーレーター」のお話です。

(2016年4月30日撮影)

山陽電鉄須磨浦公園駅下車すぐのところに須磨浦公園があります(←当たり前

須磨浦公園駅前から須磨浦ロープウェイで上がったところにあるのが須磨浦山上遊園で、よく須磨浦公園と須磨浦山上遊園とは同一視されるのですが、須磨浦山上遊園はあくまで須磨浦公園の一部分にあたる観光施設という位置付けです。須磨浦ゲシュタルト崩壊
とある天気の良い日に、久しぶりの須磨浦山上遊園へひとりでブラっと出かけてみました。

阪神電車の特急に乗って須磨浦公園で降ります。
阪神でも阪急でもない山電独特の駅の佇まいに、ちょっと昭和を感じます(悪い意味ではないです 汗
この須磨浦公園という場所は、実は私のような昭和人種のツボをさりげなく刺激してくれるスポットでもあります。

のっけから昭和パンチを喰らいました

山上遊園へのロープウェイ乗り場は須磨浦公園駅の間近…というより駅と一体化していて、駅の改札を出てすぐ右手にロープウェイ乗り場入口があります。

ロープウェイで鉢伏山上駅へ向かいます。
大型連休前半とあってか、なかなかの混雑ぶりです。

鉢伏山の北東側には源平「一ノ谷の戦い」が繰り広げられた鉄拐山があり、そこまでが広義の須磨浦公園にあたります。
ロープウェイを降りるとすぐ、問題のカーレーター乗り場が現れます。

カーレーターは、斜面に設けられたベルトの上に人が乗るゴンドラ(搬器)を置いた輸送機器です。
先ほど乗ってきたロープウェイ(索道)は鉄道事業法に位置付けがあるので鉄道の仲間と言えますが、「人間ベルトコンベア」であるカーレーターはとても鉄道とは言い難い構造の乗り物です。

最初に全国唯一と書きましたが、かつてあちこちにあったカーレーターがどんどん廃止されてついに唯一と成り果てた…というのではなく、そもそもがここと滋賀県のびわ湖バレイの2例しかなく、びわ湖が廃止されために自動的に全国唯一となってしまったものです。
ちなみに、どうも世界唯一でもあるようです。

適度な乗り心地の悪さを保つため日々努力されています

須磨浦山上遊園サイトのカーレーターページには「体調の優れないお客さま、また、妊婦の方は並行してあるハイキングコースをご利用ください」と堂々と記されていますが、体調の悪い人や妊婦さんに山登りを強いるような乗り心地の悪さとは如何なるものなのでしょうか。

乗り場はループになっていて、乗客を降ろして空になって回ってきたゴンドラに乗るという、リフトと同じ乗り方です。

順番が回ってきたので乗り込みます。

ループ部からベルト部まではローラーコンベアで案内されます。
私はカーレーターは2回目なのですが、ジェットコースターで上がっていく時のような緊張感があります(爆

ローラーからベルトに移行する際にかなり揺れます。

(音量にご注意ください)

カーレーターは全体が屋根またはシェルターで覆われていて、天候を気にせず乗れるのは良いところですが、ゴムベルトをはじめこれだけの大掛かりな装置を雨ざらしにできないことは容易に察しがつきます。

100メートル足らずの距離でしたが、思いのほか長く感じながら降り場に到着です。
鉄道ではなくベルトコンベアなので、乗り場に駅名はありません。

降りたところに「須磨浦回転展望閣」があります。
昔あちこちにあった回転展望台も今はかなり数を減らしていて、その中でも山の上にあるのは現在、秋田県の寒風山と長野県の開田高原とここだけだそうです。

展望閣からの眺めはなかなかのもので、西の方には明石海峡大橋と淡路島が望めます。

かつてこの近くに、山を切り崩した土砂を海岸の桟橋へと運ぶ長距離ベルトコンベアがありました。
JR須磨駅付近で鉄道や道路を跨いで巨大なコンベアが海へ伸びる威容は、ニュータウン開発と人工島の埋め立てを同時に行う神戸市の「山、海へ行く」政策の象徴でしたが、事業終了により撤去されて久しくなります。
このあたりは何かとベルトコンベアに縁のある土地です。

この窓のアルミサッシもなかなか昭和です

展望閣の中をうろついていると、なんとまぁジュークボックスが置いてありました。
もちろん現役で、1曲100円で好きなレコードを自動的にかけてくれます。
ジュークボックスにしろレコードにしろ、平成年代の若い人には何がなんだかでしょうが…

これはもう渋いと言っていいのかどうなのかすらもわからない、年代バラバラ・ターゲット不詳の不思議な選曲です。
とりあえず古レコ屋で手当たり次第に入手したレコードを突っ込んだ感じです。

昭和のおっさんとしては心惹かれましたが、自分が選んだ曲を大音響で鳴らされるのも気恥ずかしく、100円を投入する勇気もなく立ち去りました。

これ以外にもアナログなゲーム機が数台。スペースインベーダーも置いてありました。
こういう古い機械モノはもう部品がないでしょうから維持管理が困難で、昭和レトロを売り物にするのも大変やなぁ…と思います。

展望閣を出ると、隣の旗振山への観光リフト乗り場があります。
須磨浦公園から連なる鉢伏山-旗振山-鉄拐山-高倉山のコースは六甲全山縦走路の一部で、トレッキングの名所でもあるのですが、そこまで体力のない私はリフトのお世話になろうと思います。

いちいち昭和レトロ風で、そろそろお腹が一杯になってきました

リフトも索道の一種なのでかろうじて鉄道の仲間で、乗り場には「せっつ駅」「はりま駅」と駅名がつけられています。
ここからさらに登るのではなく、下がって上りながら谷を渡るような感じです。
摂津・播磨の国境にあたるところに大きな表示があり、リフトに乗りながらにして地理や日本史の勉強にもなります(笑

はりま駅を降りてしばらく歩くとプールと噴水があり、その向こうに眺めが開けています。
かつてここには、電飾と音楽に合わせて噴水が吹き上がる前でタカラヅカ風のレビューが演じられるという「ドレミファ噴水パレス」なるシュールな観光施設があり、このプールは1987年の閉館後に建屋が撤去された姿です。サンテレビでCMをリアルで見ていた世代です

景色も見飽きてきたので、リフト・カーレーター・ロープウェイの順で下山します。

カーレーター利用者は親子連れが多いのですが、若いカップルもちらほら見かけました。
 振動の強さに思わず抱き合って二人の距離がグッと縮まるのか
 「こんなもんに乗せて何考えてんの!」と彼女を激怒させるのか
カーレーターデートは、愛を確かめる試金石とも言えるかも知れません。

 

私はというと、久しぶりに山歩きをして疲ーれーたー… (←結局はこれが言いたかったのか?