『運転保安設備の解説』3(連動閉そく式)
(『運転保安設備の解説』2(票券閉そく式、通票式)のつづき)
前回まででご紹介した通票閉そく式、票券閉そく式及び通票式(以上を「トークン方式」と総称)は、閉そくを保証する物的証拠である通票及び通券により閉そく区間における「唯一無二性」を担保するというものです。(「トークン」とは?)
しかしながら、寒冷地や豪雪地の線区や列車本数が急増した線区など、通票類の授受に困難を伴う線区においては通票類を使用しない閉そく方式(トークンレス方式)の開発が待たれ、満を持して登場したのが「連動閉そく式」でした。
連動閉そく式も非自動閉そく方式の一種であり、停車場構内が駅長の管理下にあり駅長が閉そく作業を取り扱う点は、通票類を使用するトークン方式の閉そく方式と変わりありません。閉そくのための設備は隣接停車場に置かれた一対の「連動閉そく装置」で、両駅長が電話で連絡を取り合って閉そく器を共同で操作するところも通票閉そく式と同じです。
なお、下の文中「…図1-11に示すように…」とありますが、連動閉そく式の説明図と次に出てくる連査閉そく式の説明図(図1-13)とが逆に掲載されていたので、ここでは入れ替えています。
ちょっと信じられないミスですがこんなこともあるんですね。←校正畏るべし

図1-13の「連査閉そく式」は「連動閉そく式」と読み替えてください
この連動閉そく装置は開通表示灯、閉そく表示灯と閉そくてこを備えた「卓上電気てこ」と呼ばれるものが一般的で、駅構内の信号てこを備えた制御盤に閉そくてこを取り付けた制御盤タイプのものもありました。
連動閉そく式の最大の特徴は閉そく区間に連続した軌道回路(AT)を設けている点で、設備面では単線自動閉そく式に近似しています。連動閉そく式が登場した1943(昭和18)年、ごく一部の路線では単線自動閉そく式が実用化されていましたが、まだまだ人手による閉そくに対する信頼感が大きかった時代のこと、ポスト通票閉そく式として連動閉そく式への期待は高かったものと思われます。

連動閉そく方式は閉そく器と信号機が連鎖関係にあり、両駅間の閉そく作業が正しく行われた場合に限り列車を出す側の出発信号機を青に転換することができます。また、発車した列車が軌道回路を踏むと出発信号機が赤の保留現示となります。「両駅の出発信号機が同時に青にならない」「出発信号機が保留現示である」ことにより閉そく区間内に複数の列車を進入させないのがトークンレス方式の基本的な考え方です。
反面、通票閉そく式などのトークン方式では閉そく器と信号機の間に連鎖関係がなく、閉そく作業と信号操作は全くの別作業となります。もっとも、トークン方式の場合は通票類を持たなければ発車できないので出発信号機にあまり重要な意味はなく、中小私鉄では出発信号機を設置していない路線も少なからずありました。


上図で甲駅から乙駅へ運転する場合の閉そく作業はおおむね次のとおりです。
(1) 甲駅長から乙駅長へ電話で閉そくの承認を依頼し、乙駅長は閉そくてこ1を定位(N)から列車を迎える側(R)に引く。
(2) 甲駅長は、閉そく区間内に列車がない(ATが短絡されていない)ことを閉そく装置の開通表示灯の点灯により確認し、閉そくてこ6をNから列車を出す側(R)に引く→両駅閉そく装置の閉そく表示灯が点灯(閉そく)。
(3) (2)により両駅の信号てこの鎖錠が解かれ転換可能となる。甲駅長は出発信号てこを引き、出発信号機(4R)を進行現示(青)とする。また、乙駅長は場内信号てこを引き、場内信号機(3R)を進行現示とする。
(4) 甲駅を発車した列車が短小軌道回路(4T)を踏むと4Rが停止(赤)の保留現示となり、ATを短絡することにより閉そく装置の開通表示灯は消灯(閉そく中)。
(5) 列車が乙駅の3R手前の短小軌道回路(3T)を踏むと3Rが停止(赤)の保留現示となる。
(6) 列車到着後、乙駅長から甲駅長へ列車到着と閉そく解除の旨を連絡する。
(7) 両駅長は閉そくてこ及び信号てこをNに戻す(信号は赤のまま)。

さて、ここで連動閉そく式の長所・短所をまとめてみました。
【長所】
(1) 通票類の取り扱いをなくしたこと
これが最大にして唯一の長所でしょう。駅事務所とホームが近ければまだしも遠ければ数百メートルも通票を運ばなければならない。豪雪地など気象条件の厳しい路線でも通票授受は省略できない。通票の渡し間違いなどのミスや、通過授受の場合はキャリアの投げ損ねや取り損ねがないよう神経を擦り減らす・・・これらは駅員だけでなく乗務員にも言えることで、通票の取り扱いをなくすことで運転業務において一定のストレスフリー化を実現できたことは功績でした。
【短所】
(1) 通票類の取り扱いをなくしたこと
皮肉にもこれが短所にもなりました。閉そくを保証する物証のないトークンレスの連動閉そく式では、列車の発車可否の判断にあたっては出発信号機の現示しか拠り所がありません。何らかの事情で赤信号を見落として列車が発車したら・・・ATSや列車無線のない時代のことですから結果は明らかで、実際1947年には連動閉そく式区間の室蘭本線静狩-小幌信号場(現・小幌駅)間で、行き違い変更に伴う現場の混乱から大事故(Wikipedia「室蘭本線列車衝突事故」)が発生しています。
(2) 単線自動閉そく式に近い設備投資が必要だったこと
閉そく区間に連続した軌道回路を設ける点は自動閉そく式と変わらず、設置費用は連動閉そく式の方が若干安いかなという程度の違いだったようです。
(3) 業務合理化や人員削減につながらなかったこと
連動閉そく式も非自動閉そく方式である以上、各停車場に要員を置いて閉そく作業を行う必要があるため、抜本的な人員削減や経費節減策とはなりませんでした。
通票放逐作戦の急先鋒として登場した連動閉そく式でしたが、連続軌道回路の設置費用がネックであること、室蘭本線の事故で信頼性が揺らいだこともあって、最も普及したとされる1960年頃でも通票閉そく式の路線が約13,000キロに対し連動閉そく式は約500キロにとどまっています。
前述のように、連動閉そく式の連続軌道回路を流用して自動閉そく式(文中の「自動B」=自動閉そく式(特殊))への転換が容易であったことに加え、1961年にローコストな連査閉そく式が登場するなどますます肩身が狭くなる一方で、最後の連動閉そく式区間である奥羽本線貨物支線(土崎-秋田港間)も2026年7月に廃止予定と、完全に命運が尽きることになります。
次回は、連動閉そく式の後継のトークンレス方式「連査閉そく式」を取り上げてみたいと思います。
【参考サイト】
YouTube「連査閉そく式①「登場の背景」」(通過代用進行)
「閉塞装置」(LazyJack)
