快速リアス 2004/8/4

撮り溜めてあった8ミリビデオ映像を整理していたら、今から20年前に撮影した2004年8月の山田線快速「リアス」が出てきました。
もとが8ミリビデオなので画質がかなり荒いのですが、その中から少し抜粋してご覧いただきます。

宮古発盛岡行「リアス」ではキハ52が元気な姿を見せていました。
当時のダイヤでは単行が基本のようですが、夏の多客期ということもあって2連での運転です。

私が乗ったキハ52151という車は1966年9月に新潟鐵工所(現・新潟トランシス)で落成、一貫して盛岡区で働き、2007年12月廃車とともにミャンマー国鉄に譲渡されました。
そこからすでに相当の年数が経過しているので、彼の地での消息が気になるところです。

非冷房車なので窓を開け放ち、風を受けながら窓の内側からカメラを回します。
もともとは二段上昇窓だったのが、すきま風防止対策として1990年代に一枚窓に改造されています。

「リアス」停車駅は茂市、陸中川井、区界と上米内-盛岡間の各駅。
茂市駅、陸中川井駅に停車後は、交換可能駅の川内駅を通過します。当時の山田線盛岡-宮古間は連査閉そく式で、非自動閉そく方式の路線では駅構内は駅長の管理下にあるため、列車の発着や通過時には駅長が監視します。

列車通過を監視する駅長(川内駅)

山田線盛岡-宮古間が2018年3月に連査閉そく式から特殊自動閉そく式に変更された後も各閉そく扱い駅(交換可能駅)では駅長が信号やポイントの取り扱いをしていたのですが、翌4月のCTC(列車集中制御装置)の導入によって閉そく扱い駅の上米内、区界、川内、茂市が無人駅となりました。

【動画】川内駅通過

川内駅を通過した列車は次の平津戸(ひらつと)駅を通過します。
この駅は「利用が極めて少ない」との理由で2022年3月ダイヤ改正をもって全列車通過となったのですが、全列車通過イコール廃駅ではなく、翌年3月12日の正式廃止までの約1年間「休止」扱いとして存置されていました。
山田線では他に大志田(おおしだ)駅と浅岸(あさぎし)駅(いずれも今の上米内-区界間)も同様に休止期間を挟んで廃止となっています。

列車は山田線のサミット・標高744メートル地点にある区界駅に停車。
区界という地は、分水嶺であり陸中国岩手郡と下閉伊郡との郡界であり現在は盛岡市と宮古市の市界となっています。
いわゆる「平成の市町村大合併」の結果ではあるのでしょうが、近畿地方の狭苦しいところに住んでいる私など、内陸部の盛岡市と三陸海岸を擁する宮古市とが隣接しているスケールの大きさには驚きを覚えます。
かつては小本が岩泉町であることに驚いていたぐらいですので・・・

ここでは「ぐるっとさんりくトレイン3号」と交換します。1号が盛岡発(東北本線・釜石線)釜石行、釜石から山田線(現・三陸鉄道)経由の臨時快速宮古行、3号が宮古発(山田線)盛岡行という、列車名のとおり盛岡発盛岡行の循環列車でした。線名の起源である陸中山田駅も今や三陸鉄道リアス線の駅で、盛岡-宮古間は「山田を通らない山田線」となっています。
車両は前面展望席を持つジョイフルトレイン「Kenji」。種車がキハ28・58とはとても思えない変貌ぶりですが、2018年9月の廃車まではJR線上を走る最後のキハ58系だったそうです。

区界駅はCTC化に伴う無人化の際に交換設備まで撤去され、棒線駅となってしまいました。
そのため現在の山田線では上米内-川内間51.6キロが1閉そく区間となり、只見線会津川口-大白川間48.4キロを凌ぐ長距離閉そく区間のチャンピオンに輝いています。
閉そく区間が長くなるとダイヤ組成の自由度が低下し、ダイヤ乱れ時の回復運転や臨時スジの設定が困難となるので、チャンピオンに輝いても決して喜ばしくはないのですが。

【動画】区界駅停車

区界駅からはおおむね下り勾配にかかり列車のスピードが上がります。隣の上米内駅までは、廃駅となった浅岸駅と大志田駅を挟む25.7キロという長い駅間距離です。
浅岸駅・大志田駅ともに1982年まではスイッチバック構造の駅でしたが、私の山田線初乗りはすでに棒線駅となった後の1987年でした。

30分近くかけて上米内駅に到着。列車交換があるのでしばし停車します。

あちらはキハ58連結でちょっとグレードが上?

盛岡-上米内間は通勤通学需要があるため朝夕に若干の区間列車が運転されています。しかしながら、上米内駅から宮古方への列車は2024年5月時点で4本、時期によっては朝の1本しかない日もあります。
山田線に並行する国道106号線経由の岩手県北バス「106特急・急行」が1時間ごとに出ているのに対し、JRとしては完全にバスとの競争を放棄している形です。
その割には自動閉そく化やPC枕木化、途中駅の駅舎建て替えなど一定の投資は行われており、路線を維持しようという姿勢は見受けられますが、山田線をどうするのかJRの展望がなかなか見えてきません。

【動画】上米内駅停車

上米内駅を出てさらに下っていくと突然沿線の人家が増えて都市近郊路線の趣となり、1面1線の山岸駅・上盛岡駅に停まって盛岡駅着。
盛岡-山岸間はほぼ完全な市街地で、上米内駅まで列車を増発すれば通勤通学以外の潜在的な需要を呼び起こせるのでは・・・と思ったりもするのですが、2013年から行われた列車増発やバスとの接続改善などの社会実験が3年半で打ち切られたとのことなので、私の見方は相当甘いのかも知れません。

折しもこの2024年4月から、区界-宮古間の各駅を発着するJR乗車券で106特急・急行バスへの乗車が可能になるという、これも期間限定の実証実験的な試みが始まったそうです。乗車券面に発着区間が明記されている普通乗車券や定期乗車券などが対象(発着区間の表示がない青春18きっぷなどの企画乗車券は対象外)で、盛岡以遠から山田線内へ行く場合に列車本数がネックとなってJR+バスというダブル運賃を払っていた利用者にとっては、目的駅まで通しで乗車券が買えるようになるのは確かに朗報です。

劇的な効果は出ないとしても、山田線が少しでも元気になってくれればと願ってやみません。