連査閉そく式

よんかくサイト「線区別通票種別一覧」の内容見直しをしていたら、ふと連査閉そく式のことが気になってきました。

連査閉そく式は通票類の取り扱いをなくすために開発されたトークンレス方式のひとつで、1962年の羽越本線列車衝突事故を機に幹線系から急速に姿を消して行ったことは皆様ご存知のことと思います。

ではこの羽越線事故はどのようにして起こったのか、ネット上の記載をもとにまとめてみますと

1  大幅に遅延していた下り単行蒸機Aと、同じく遅延の上り貨物列車Bとの行き違い駅を、当初予定駅から羽後岩谷に変更
2 羽後岩谷の上り方隣駅の羽後本荘ではAが停車中で、助役がA機関士に羽後岩谷での行き違いを通告
3 その間に運輸指令が行き違い駅を羽後岩谷から羽後本荘に急遽変更し、両駅に指示
4 指示を受けた羽後岩谷駅長は羽後本荘に閉そくを依頼
5 羽後本荘では助役不在のまま、無資格の係員が勝手に閉そくを承認
6 Bは定時運転に復し、羽後岩谷を通過
7 再度の行き違い変更を知らない羽後本荘助役は、出発信号が停止現示なのを見落として出発合図、Aが発車
8 羽後本荘ー羽後岩谷間で事故発生

この事故にはいくつかの要因があります。
羽後本荘助役がA機関士へ行き違い変更を通告中に、運輸指令が急に再度の行き違い変更を行ったこと。
羽後本荘で無資格者が閉そく作業を行ったこと。
羽後本荘助役が出発信号の停止現示を見落としてAを出発させたこと。
機関車の警報装置が出発信号には反応しない設計だったこと。
このほか、羽越線ではタブレットから連査に転換されたばかりで全体的に不慣れだったことも遠因としてあったようです。もしタブレット閉そくのままなら起こり得なかった事故です。

しかしやはり最大の原因は、複数のミスが重なるとフェイルセーフが働かなくなる連査閉そく式そのものの構造上の欠陥でした。
「通票扱い不要」の利便性と引き換えに人間の注意力でカバーすべき部分が大きくなってしまったという弱点が、ものの見事に突かれた形と言えるでしょう。その意味では、人間の注意力に頼る部分が小さい自動閉そく方式の方が、安全性という面で理に適っていると言えます。

連査や連動といったトークンレス方式が早々に姿を消す一方で、タブレットなど通票を用いる方式が残り続け、今なお細々ながら存続しているのはなんとも皮肉な現象です。
よんかくとしては別に「通票を復活すべし」などと主張するつもりはありませんが、何かを達成するために何かを犠牲にする場合、犠牲にされる何かを完全にカバーできるものがないといつかは破綻が訪れるのだと、改めて思ったことでした。