ネ part1

古い時刻表のことを書いていたら、ふと寝台車の思い出が私の中をよぎって行きました。

寝台車の思い出とは言ってもほとんどB寝台の思い出なんですが、保管してある寝台券とともに、少しばかりの昔語りをしてみたいと思います。

なお、言うまでもなく文中の「ロネ」はA寝台、「ハネ」はB寝台を指します。
また、寝台券等の年月日の元号は全て「平成」か「昭和」です。

まずは「日本海」。

こことかこことか、さんざん寄り道した北海道旅行の締め括りです。
学生時代最後の旅行だったのですが帰りのルートをまともに考えておらず、乗車日前日に急遽乗ることに決めたため上段しか空いていませんでした。
同じ「日本海」でも、青森発着の2・3号は開放式ロネが1両連結されていましたが、函館発着の1・4号は全車2段式ハネのモノクラス編成でした。ハネとはいえ2段式は天井が高く、上体を起こして着替えができるぐらいなので、後に出てくる10系や20系客車の3段式とは居住性において雲泥の差があります。

その3年後、再び4号に乗りました。
今度は事前に寝台券を買いに行ったにもかかわらずまた上段…
「日本海」の思い出は上段の思い出です。

車中の様子や車窓風景の動画を撮っていました。
この時もほぼ満席で、カメラを回すとどうしても人が映り込んでしまうため、寝台の形状をハッキリ撮影できなかったのが悔やまれます。
雰囲気だけでも。

ハイケンスのセレナーデとともに函館発車時の車内アナウンスがお聞きいただけます。
アナウンスにもあるようにこの日は5両編成で、2号車は秋田まで指定席として座席利用(いわゆるヒルネ)ができました。下段ベッドを座席として向かい合わせに2人ずつ座ることになりますが、一般のクロスシートと違って座面が長いのでゆったりと座ることができます。
ヒルネ特急券も座席番号は「○号車○番上段」などと印字されるのが面白いところで、上段と指定されても当然ながら座るのは下段です。冗談でも上段で横になってはいけません
もちろん、秋田でヒルネ客を降ろした後の2号車は普通のハネとして稼働します。

ここで、交通公社の時刻表1977年9月号の営業案内を見てみます。
まだまだ寝台列車が長距離輸送の主力だった頃です。

ベッドから顔を出すおっさんのイラストがいいですね。

B寝台料金は寝台の型式により異なっていて、当時もっともハイグレードだった「客車2段式」と昔ながらの「客車3段式」には1,000円の差がつけられています。後でも触れますが、この価格差はもっと大きくてもよいのではないかとさえ思えるほど、居住性と快適さに違いがありました。

なお、A寝台料金表にある「通行税」とは、かつてグリーン料金とA寝台料金に課されていたいわゆる贅沢税で、同趣旨の物品税とともに消費税導入を機に廃止されました。

次に各寝台の広さと料金を見比べてみましょう。

当時は旧型の10系や20系客車の52cm幅3段式ハネが多数派で、上のとおり寝台幅、長さ、高さのすべてにおいて2段式ハネと格差がありました。
3段式のサービスアップを図って70cm幅の14系ハネが登場してはいますが、これも24系2段式ハネに駆逐されるかのように次第に特急運用から外れ、急行列車や臨時・団体列車などに活路を見出すこととなります。

電車寝台は上・中段と下段で料金差がありますが、これは昼間時に座席となる下段が幅106cmとロネをも凌ぐ広さであるためです。
しかしながら3段式ゆえの高さ不足は如何ともし難く「旧型3段式よりはマシだが2段式には及ばぬ」とでも言いたげな中途半端な料金設定となっています。

いっぽう、2段式ロネと2段式ハネとの間には2.5倍以上の料金差がありますが、両者の違いというと30cm程度の寝台幅の差しかなく、占有できる空間の大きさに違いがあるとはいえこれだけ大きな差が妥当なのかどうか疑問です。
せいぜい「寝返りを打っても壁に当たらない、転落しない」という安心感と、A寝台に乗ってるんだぜ的マウンティング感がロネのアドバンテージでしょうか(もちろんハネにも転落防止帯が2本掛かっているので、普通の寝方をしていれば転落することはありません)。
個室ロネ13,000円に対して2段式ロネが1万円以上というのも、かなりバランスの悪い価格設定のように思えます。

次に、寝台利用上の諸注意点。

ロネと新型3段式ハネの更衣室…ネット上では更衣室の写真がいくつか上がっていますが、1m四方もないような、直立して着替えるのがやっとのスペースでした。
2段式ハネは寝台内で着替えろということか更衣室は設置されませんでした。

また、おとなとこども又はこども同士の2人で1つの寝台が使えました(寝台料金は1人分でOK)が、現実的にはロネや電車ハネ下段で幼児を添い寝させるのが関の山と思われ、70cm幅ハネはともかく52cm幅では幼児でも2人利用は到底無理でしょう。

蛇足ですが、2段式ロネ利用の夫婦やカップルがこっそり下段で…ということも少なからずあったとかなかったとか(大汗

  

part1の終わりにもう1枚、「おおぞら」の2段式B寝台券をば。

これは新婚まもない頃に「北海道ペアきっぷ」を利用した時のものです。我々は下段の2人使用はしていません
発行箇所は今はなきJR北海道プラザ(ツインクルプラザ)の大阪支店で、一般の寝台券ではなく企画乗車券の指定券として発行されました。

この日はサッポロビール園でジンギスカンをつついている時、妻が寝台車に乗る前にお風呂に入りたいと言い出し、あわてて札幌駅近くの北4条あたりで探し出した銭湯で一浴したのち乗り込んだ覚えがあります。

帰途にはここの2人用個室ロネに乗っています。

part2以降も寝台券や寝台車への思いなどを順次綴っていこうと思います。