高知の夜と徳島の昼

いや、小説や漫画のタイトルと違いますて

土讃スヰツチバツク街のつづき)

スイッチバック探訪の後はもちろん高知へ。
高知名物・名所は数あれど、非自動趣味的にはこれでしょう。

とさでん交通伊野線 朝倉電停での通票授受風景と朝倉神社前電停到着

八代行き違い場所が棒線化されて以来、路面電車の通票授受が見られるのはここだけとなってしまいました。
かつて、伊野線での通票授受は運転士同士で行っていたのですが、朝倉で通票を受け取らずに発車する重大インシデントが2回も立て続けに発生したため、現在は駅長を介して授受を行っています。

朝倉電停の架線上にかかる「通票確認」標識

こんどは車内から授受の様子を撮ろうと、朝倉電停のひとつ伊野方にある朝倉駅前電停から乗るべく歩き始めるもあっという間に着いてしまったので、もうひとつ向こうの朝倉神社前電停まで歩くことにしました。
さっき朝倉で撮影した車両が伊野で折り返してくるまで結構時間があります。

こういう専用軌道ぽい併用軌道ていい感じです

朝倉神社前電停のすぐ横には土讃線が走っているので、電車待ちのあいだも退屈せずに済みます(笑
ところが、伊野で折り返して来た2000系車両に乗り込むと運転席横の遮光幕が下されていて、車中からの通票授受風景は撮れませんでした(泣
笑うたり泣いたり忙しいな

はりまや橋電停で乗り換え券を受け取って下車し、高知駅方面へ乗り換えます。
乗り換えには横断歩道を2回も渡らねばならず、信号待ちの間に高知駅前行が出て行ってしまいました。
電車待ちの間に桟橋方面行のアンパンマン電車が登場。JRのアンパンマン列車と違い、こちらはやなせたかし画伯の手になる原画が描かれています。

高知駅近くのビジホに投宿。
駅ナカを含め駅周辺には飲食店がほとんどなく、はりまや橋の繁華街まで出るのもしんどかったので、駅に近い地スーパーで仕入れたかつおのたたきや焼サバ寿司などをホテル室内でいただきました。

翌朝…曇っていますが天気は良くなるようです。
昼食を調達すべく、8時に開店したばかりの高知駅1・2番ホームの駅弁店を覗くと、入手困難で幻の駅弁とまで言われる「かつおたたき弁当」が並んでいました。
たたきは昨夜も食べましたが、そんなこと構わず衝動買いです。

たたきは肉厚で、半端ではない食べごたえがありました

これから土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線と高知東部交通バスで室戸岬を経由して甲浦方面に向かい、阿佐海岸鉄道のDMV乗車および撮影ののち、徳島へ出て高速バスで帰るという行程です。
そしてこのルートにまさにぴったりな四国みぎした55フリーきっぷというのが販売されていて、利用しないわけにはいきません。

ごめん・なはり線もやなせたかしテイストです

高知830発の快速で奈半利へ向かいます。
奈半利駅前のバス停には20人ほどの列ができており、室戸岬の人気もたいしたもんやなぁと感心していたらほぼ全員「モネの庭」行の北川村営バスに乗り込み、室戸方面へのバスに乗ったのは私と地元らしき人の2人だけでした。

バスは室戸岬を少し過ぎたところにある室戸世界ジオパークセンターが終点で、甲浦方面へのバスに乗り継ぎとなります。
バス待ちの間にジオパークセンターを見学してかつおたたき弁当を食べ、バス停のベンチでしばしボーッとしていると、土日祝日に1往復のみ運行するDMVの室戸延長便がやってきました。
DMVとの初対面です。

見かけはフツーのマイクロバスで、これが鉄道車両に化けるとはとても思えません

DMVが室戸岬方面へ出て行った後に甲浦岩壁行バスが入ってきます。
バスはDMVの甲浦駅停留所には寄らず、少し離れた場所にある「海の駅東洋町」に到着。ここでDMVに乗り換えとなります。

すぐ左側は海水浴場です

DMV路線は起点の阿波海南文化村からバスとして運行し、阿波海南-甲浦間を鉄道として、甲浦から終点の道の駅宍喰温泉までを再びバスとして走ります。起点と終点が徳島県内で、ここ海の駅東洋町と甲浦だけが高知県内という少々ややこしいルート設定です。
DMVへの乗車は事前予約が原則で、空席がある場合に限り予約なしでも乗車できます。定員は座席18名プラス立席4名で、予約システムではそのうち16席が予約用に充てられているようです。

ほどなく道の駅宍喰温泉行DMVがやってきました。この便でいったん道の駅宍喰温泉へ行き、折り返し阿波海南方面行に乗車することにします。運転士氏に乗れるかどうかを確認のうえ乗車し、道の駅宍喰温泉へ向かいます。
四国みぎした55フリーきっぷはDMV乗り放題なのですが、道の駅宍喰温泉から阿波海南までは最前席に座りたかったし、何よりも満員で乗れなかったら困るので、正規料金を払って予約を取りました。
結果から言えば、予約する必要はまったくありませんでした。←良イコトナノカソウデナイノカ…

阿波海南に向けて出発です。

国道55号線を軽快に走行

車両自体は一般的なAT車のマイクロバスですが、運転席を覗くと速度計などの計器類に並んで鉄道モード時の車内信号の表示灯、そして横にはモードチェンジ及び信号関係の制御機器が設置されています。
バスとしての乗り心地は、何の変哲もないマイクロバスでした。

再び海の駅東洋町に立ち寄ったのち国道から横道に外れ、阿佐海岸鉄道の高架をくぐってすぐ左手にある踏切の遮断棒のようなゲートが上がり、甲浦駅停留所に到着。
乗降扱いを行ったのち、モードインターチェンジである甲浦信号場へのランプウェイをぐるっと登っていきます。

DMVの鉄道区間はモードインターチェンジ相互間の阿波海南信号場-甲浦信号場間となっていて、阿波海南と甲浦ではモードインターチェンジの外側にあるバス停留所で乗降を扱うので、鉄道駅としての阿波海南駅と甲浦駅は存在しないことになります(鉄道区間内にある海部と宍喰は鉄道駅です)。

甲浦信号場は高架上の旧・甲浦駅ホームから少し飛び出たところにあり、車両はモードインターチェンジ上に停車してバスモードから鉄道モードへの切り替えを行います。
モードチェンジの様子は通票よんかくサイト「信号場応援団」の阿波海南信号場・甲浦信号場ページをご覧いただくとして、私以外にも車中の5名程度の乗客は各々スマホやカメラを構えています。

運転士氏がセンターと交信ののち制御装置のボタンを押すと、「モードチェンジスタート」のアナウンスとともに徳島県立海部高等学校の生徒による軽やかな海南太鼓囃子が流れ出し、車体がわずかに持ち上がって「フィニッシュ」の声。ものの20秒程度でチェンジ完了し、車内信号の「チン」というベルの音が鉄道の閉そく区間に入ったことを教えてくれます。

鉄道モードへのチェンジ後は運転士氏が一旦車外に出て、目視で車輪の状況を確認します。

鉄道モードとなって線路上を走り出します

旧・甲浦駅ホームを通過し、従来からある線路を走ります。
従来からある線路ではありますが、DMVは前後1軸ずつの2軸車のため、レールのジョイント音がトンタン、トンタン…と耳慣れないリズムを刻んでいます。
しかもレールに接しているバス後輪タイヤを駆動輪として進むので、これを鉄道車両と呼ぶべきかどうか私などはとても躊躇するのですが、レール上を走行しているという厳然たる事実に抗う術を持っていないので、鉄道車両の一形態として心の整理をつけるようにしています。

サーフボードを象った駅名標

阿波海南信号場の100メートルほど手前にある停止目標で一旦停止ののち、車内信号のベル音とともにゆっくり進み、さらに場内標示通過時とモードインターチェンジ進入時にベルが1回ずつ鳴り停車。バスモードへのチェンジが始まります。
バスへのチェンジ後は運転士氏の目視確認はなく、そのまま停留所に進んで乗降扱いという流れです。

阿佐海岸鉄道DMVは観光利用に特化した交通機関だと言われています。
もともとDMV化以前の阿佐海岸鉄道阿佐東線自体、路線延長が短いうえ県を跨ぐため地元の方の利用が少なかったそうで、大口旅客であるはずの高校生の利用もほぼ見込めなかったのでしょう。
DMV化によって運賃が上がり、しかも予約なしの場合の乗車保証がないとなれば、もとから少なかった地元利用客がますます遠のいていくのではと危惧しています。
また、私は阿波海南駅停留所で撮影のため2時間近く滞在しましたが、休日というのにどの便も空いており、地元利用どころか観光利用も怪しいのでは…といささか不安になりました。

もうひとつ別の問題として、DMVを運転するには甲種内燃車運転免許と中型以上の二種免許の両方を取得しなければならず、乗務員の確保が容易ではない点が挙げられるでしょう。

このページを書いている時点ではまだ開業1年足らずですが、物珍しさで乗る需要がいつまでも続くとは思えないので、早くも正念場を迎えつつあると感じました。

海部駅 「純粋トンネル」はいまだ健在

どうにもテンションの低い結びとなってしまいましたが、高い確率で予想されている南海トラフ地震の発生時には高架鉄道の強みを生かした活用も想定されているとのことですので、今はただ阿佐海岸鉄道DMVの今後の盛況をお祈りしたいと思っています。