おときゅう旅4 面白い面白い仙山線

「おときゅう旅3 北上→横手→福島→仙台」のつづき 2025年7月4日撮影)

山形新幹線で福島駅、乗り換えて仙台駅。ここから仙山線で山形駅へ戻ります。
仙山線も約20年ぶりの乗車です。駅構内には仙山線のPRパネルが掲出してありました。

仙山線のサミットは面白山をくぐり抜ける仙山トンネル(5361メートル)で、トンネル内には面白山信号場なる交換型信号場があります。駅間距離が長い奥新川-山寺間に信号場を設けようにも勾配連続区間のため適地が見つからず、やむなく勾配の緩いトンネル内に作られたものと言われています。トンネル内の信号場は他にもいくつかありますが、ここは1937(昭和12)年の仙山線全線開通時に設けられた一番の古株です。

面白山信号場開設当時の仙山線は通票(タブレット)閉そく式だったのですが、暗くて狭いトンネル内での通票授受は困難を極めるため、作並-山寺間は通票を用いない非自動閉そく方式である連動閉そく式を施行。仙山トンネルの山寺方坑口、現在の面白山高原駅の位置に面白山信号場の駅舎があり、閉そくを扱うとともにポイントと信号を遠隔操作していました。

▼面白山信号場の詳細はよんかくサイト「信号場応援団」面白山信号場
▼連動閉そく式は同「明解通票辞典」
をそれぞれご覧ください。

近年の面白山信号場では、臨時列車運転時やダイヤ乱れ時などごく限られた場面でしか列車交換が行われていませんでした。そらまぁ一般の乗客にとっては、トンネル内で突然停車して対向列車が通過する轟音を聞かされるのは気味が悪いでしょうから、面白山信号場での列車交換を極力避けたいという思いは信号場愛好家のよんかくとしても理解できます。←なぜに上から目線?

下は2017年8月時点の作並-山寺間のよんかく手製ダイヤグラムで、列車交換はほぼ作並・奥新川・山寺の各駅で行われ面白山信号場など無きが如しというダイヤとなっています。しかも奥新川駅での交換は日に2回しかありませんから、スジを少しずらせば作並-山寺間を1閉そくで運行できそうです。

青線は快速 黒線は普通

ところが2023年3月改正ダイヤで禁じ手のはずの面白山信号場での列車交換が復活しました・・・しかも1回2回ではなくいきなり8回(驚
特に列車が増発されたわけでなく、奥新川駅での列車交換がなくなっているところからしても、面白山信号場での列車交換をやりたいがためにわざわざスジをずらしたとしか思えません。よんかく的には山形新幹線と並行する羽前千歳-山形間でのダイヤ調整の関係かなと思ったのですが、こればかりは部外者が知る由もありません。

2025年7月時点のダイヤグラム

というわけで、仙山線を往復して面白山信号場の交換風景を2回見て来たいと思います。これから乗る仙台1441発839Mは1540ごろ面白山信号場で列車交換を行うダイヤとなっています。

運転席後ろのかぶりつきにはスマホに見入っているおっさんがすでに立っていたので、まぁ愛子駅あたりまでで降りるんやろうと思って前の方の窓際席に座りました。ところが当のおっさんは愛子駅どころか作並駅でも降りる気配がなく、かと言ってかぶりつきに強引に割り込む度胸もないので、自席の窓から動画を撮ることにします。

斜めっていますが仙山トンネルに入るところです

仙山トンネルに入ってしばらく進むとおもむろに列車のスピードが下がり、ポイントを渡る音&揺れとともに停車。2分ほど待つと上り線を仙台行840Mが通過して行きました。

【動画】面白山信号場停車→列車交換→発車(動きのない部分をスキップしています)

これでいちおう面白山信号場での列車交換体験は全うできたわけですが、やはり前望かぶりつきから見たかったと言うのが本心です。結局、仙台駅からかぶりつきに立っていたおっさんはスマホに夢中で前望もせず信号場の動画も撮ることなく、立ったまま山形駅まで乗り通していました。

山形駅ですぐとんぼ返りするのももったいないので、これまた久しぶりの左沢線に乗ってみることにします。ちょうど下校時間帯なので左沢線ホームにはぎっしりと高校生が並び、2両の折り返し編成に2両を増結する作業が行われていました。いわゆる地方交通線の気動車普通列車というと単行かせいぜい2連がほとんどの昨今、4両編成というのはなかなかお目にかかれません。

満員状態で山形駅を発った左沢行は北山形駅の手前で本線と分かれ、2面2線の専用ホームに到着。

【動画】北山形駅到着  狭軌(仙山・左沢線)と標準軌の単線並列

左沢線に入ると駅ごとに高校生が下車し車内は空いてきますが、寒河江駅など途中駅からも違う高校の生徒が乗ってきます。
左沢駅ではわずか6分で折り返し。駅を出て少し歩いてすぐに列車に戻ります。

左沢の特産品は洋梨とのことです

左沢駅を4両編成のまま折り返します。左沢線沿線には高校が多いようで、復路もいくつかの途中駅から高校生が乗り込み、双方向で列車が混み合います。

北山形駅で仙山線に乗り換え。山形新幹線(山形線)、仙山線、左沢線の各線それぞれ2面2線の計6線を持つ大きな駅です。ここからひと駅間は山形新幹線と並走して、次の羽前千歳駅で仙山線に入ります。

山形-羽前千歳間は標準軌(山形線)と狭軌(仙山線・左沢線)が並走する単線並列で、狭軌線は北山形駅で左沢線を西側へ分つため標準軌線の西側を走行しますが、仙山線は羽前千歳駅から東側へ分かれていくため、羽前千歳駅の山形方手前で標準軌線とクロスするポイントがあります。
羽前千歳駅は1面のホームを山形線と仙山線で挟む構造なので、どちらの路線もこの駅で列車交換をすることはできません。

【動画】羽前千歳駅の標準軌・狭軌クロスポイント

本日2回目の仙山線はかぶりつきからの前望です。
仙山トンネル手前の面白山高原駅に到着。面白山信号場はトンネルに入って約1キロのところにあります。

面白山高原駅と仙山トンネル坑口

ここから列車交換を済ませるまでの動きを動画に収めたのですが、動画ファイル容量の都合で3回に分割して掲載します。

トンネル坑口からすでに面白山信号場の上り遠方信号機と場内信号機の灯火が見えています。上り場内が停止現示(R)なので、遠方は注意現示(Y)です。普通なら減速しながらそのまま上り場内の停止位置まで進むのですが、ここでは停止位置のかなり手前で一旦停止します。向こう側から対向列車の前照灯も見えてきました。
暗くて狭くて見通しが悪いトンネル内という特殊事情に加え、衝突防止のための安全側線が設置されていないため、列車の過走防止には当信号場独特の対策が講じられているように見受けられます。

【動画】上り遠方信号→上り場内信号のかなり手前で一旦停止

一旦停止ののち、上り場内信号の正規の停止位置で再び停車します。下り線にはすでに対向列車が停車しているようです。

【動画】一旦停止ののち徐行→ATS鳴動→上り場内信号停止位置で停車

上り場内Rで停車後、車内放送で交換待ち停車の案内が流れます。
対向列車が完全に停車したことが検知されたのち、まず上り出発信号が進行(G)に先引きされます。もちろん場内がRのままなのでこちらとしてはどうすることもできませんが(笑
まもなく上り場内もGとなり、信号場を通過します。

【動画】場内停止→出発進行→場内進行→対向列車と交換

信号場構内の配線は両開き分岐なので分岐器通過時は制限75がかかります。見る限り交換部分の有効長は4両分しかないので、5両編成以上の列車は面白山信号場を通過するスジを引く必要があります。

【動画】面白山高原駅発車から列車交換まで(2倍速・無音)

2回目の面白山信号場列車交換を堪能した後はこのまま仙台駅まで乗り、今夜は仙台泊まりです。

作並駅を過ぎてしばらく走ったところで進行方向左側前方でドスン!という音と衝撃が走り、列車が急停車。列車が動物と接触したので安全確認を行なっている旨の車内放送があり、乗務員氏が車外に出て慌ただしく動いています。こんな事態に遭うのは20数年前、乗っていた石北本線「オホーツク」がエゾシカと接触して以来です。
25分ぐらい停車ののちようやく発車。一体何の動物と接触したんやろ?と思ってたら「次は熊ヶ根」とアナウンス。熊がねぇ・・・?(汗

平日の帰宅ラッシュ時しかも仙山線は全線単線なのでダイヤは大混乱と思いキヤ、ほぼ全ての交換駅で列車交換をするネットダイヤ状態ではありましたが、愛子駅の場内信号で数分停められた程度で割とすんなり仙台駅に到着しました。よくよく考えるとこの列車1本遅れたところで、列車本数の大半を占める仙台-愛子間の区間列車が致命的な影響を受けるわけでもなく、じっさい愛子駅から先は多少のダイヤ乱れ程度で収まっていたようです。

明日はおときゅう旅の最終日、まず「こまち」で秋田方面へ赴く予定です。

(次回へつづきます)