周って遊ぶ周遊券 2

「周って遊ぶ周遊券」のつづき)

前回ワイド・ミニ周遊券ネタの中で大事なことを言い忘れていました。
ちょっと面倒くさいハナシですがお付き合いのほどを・・・

国鉄の「周遊割引乗車券発売規則」の「第3章 均一周遊乗車券」にこのような条文があります。「均一周遊乗車券」はワイド・ミニ周遊券を指します。
第17条第3項
均一周遊乗車券を購求する旅客又は所持する旅客は、その購求の際又はこれを呈示のうえ、自由周遊区間並びに第20条第1項に規定する乗車船経路に接続する指定地接続線、経由社線及び附随発売社線を周遊できる周遊船車券の発売を購求することができる。

ここに登場する指定地接続線、経由社線とは、国鉄駅から周遊指定地へ行くための鉄道、軌道、索道、航路、自動車線及び航空路(会社線)のうち国鉄が認めたもので、一般周遊券に1割引で組み込むことができる交通機関です。また、それ以外でも国鉄から一般周遊券の販売を委託された旅行会社が乗車券の販売契約を結んでいる交通機関(附随発売社線)のきっぷも割引運賃で一般周遊券に組み込むことができ、これらの周遊券用割引きっぷを周遊船車券と称していました。

つまりは「ワイド・ミニに接続する周遊船車券を同時に(またはワイド・ミニを提示して)購入すれば、一般周遊券と同様の割引になる」ということで、ここがワイド・ミニが単なる乗り放題きっぷではなく「周遊券」たる所以と言えましょう。
ただ、この制度は窓口での扱いが煩雑になるせいか広く周知されることもなく、私も最初は知らなかったのですが、ものの本で読み知って本当かどうか試してみたことがありました。原券は北陸ワイドです。

図示された自由周遊区間のうち今もJRなのはどこでしょう?

この旅行では北陸方面の私鉄完乗という目的があり、周遊指定地にかかる京福電鉄(現・えちぜん鉄道勝山永平寺線)福井-永平寺(廃駅)間、北陸鉄道石川線野町-加賀一の宮(廃駅)間、富山地方鉄道本線新魚津-宇奈月間の3社線のきっぷを北陸ワイドとともに1割引で購入しました。周遊指定地にかからない福井鉄道、北陸鉄道浅野川線、加越能鉄道(現・万葉線)などはもちろん通常運賃で乗りました。
また黒部峡谷鉄道は、起点の宇奈月駅は周遊指定地内であるものの終点の欅平駅が外れているため無割引となります。黒部峡谷鉄道そのものがひとつの観光資源なので、指定地接続線や附随発売社線には該当しないという理屈なのでしょう。

そんな昔話はさておき(て周遊券ネタ自体が昔話やん)前回に続いて関東地方からワイド・ミニ・ルートを見ていくことにしましょう。

「日光・那須ミニ」。この当時はまだ東北新幹線がなく、上野発急行「日光」などの直通列車も本数が少ないので、名古屋や大阪から国鉄だけで日光駅へはちょっと行きづらい感じです。しかも東武鉄道がガン無視されているので、日光から鬼怒川温泉へは西那須野駅まで行って国鉄バスに乗れという罰ゲームのような周遊券です。けど何気に烏山線にも乗れるのはいいですね(笑
「水戸・奥久慈ミニ」は何がターゲットなのかよく分からなかったのですが、日本三名瀑のひとつ「袋田の滝」があるんですね。それより常陸太田駅へも乗れるのがよんかく的には嬉しかったりして。

「東京ミニ」は、前にも言いましたが単純に東京への往復きっぷを買うのがアホらしくなるような美味しい周遊券で、よんかくはこれを使って東京周辺の国鉄・JRの大半に乗りました。
関東にはワイド周遊券がなく、ミニ周遊券も埼玉県の大部分と群馬県が置き去りにされていますが、群馬県については草津や白根などを巡るルート周遊券が5コース設けられ空白を埋めていて、ルート周遊券がいまいちなよんかくでも「404 志賀・草津」や「405 志賀・浅間」は使ってみたかったなぁと今でも思っています。
ちなみに、観光地の定番中の定番と思われる箱根・伊豆方面のルート周遊券がありません。もちろんどちらも周遊指定地ではあるのですが、かつて某大手私鉄の激しい覇権争いが繰り広げられた場所だけに国鉄が遠慮しているのでしょうか・・・

中部地方には「信州ワイド」「北陸ワイド」が君臨。
「信州ワイド」は鉄道というよりバス周遊券に近く、よんかくも白樺高原線の上田-霧ヶ峰間、上諏訪-東白樺湖-小諸間と、高遠線伊那北-伊那里-茅野間に乗っています。東京発には草津・白根方面のバス旅行や、往復経路の片道を中央西線・名古屋経由で大回りできるオプションが付いていました。
「北陸ワイド」に付いていた能登旅行オプションの内容は「能登・加賀温泉ミニ」とほぼ同じで、「北陸周遊券G券」として添付されました(北陸周遊券券面の「G券片番号」欄はそのため)。

そしてルート周遊券も多士済々で、上高地、乗鞍、アルペンルート、能登、中信高原などの人気コースが揃っていて、その中で「508 日本ライン・明治村」はコース内に「ライン下り」がある関係上、逆方向からの旅行が不可能な唯一のルート周遊券でした。
サブルートも「554 長島温泉」などはなかなかシブいところを突いてるなぁと思います。

ちなみに、周遊券制度の廃止後もアルペンルートだけは「立山黒部アルペンきっぷ」として独立し、現在も販売されています。

立山黒部アルペンきっぷの残骸(知人から譲り受けたもの)

と、ここまで書いてきてふと、静岡県がどのワイド・ミニ・ルート周遊券にも全くかかっていないことに気づきました。埼玉県も同様の境遇とはいえ「東京ミニ」の自由周遊区間に少しだけ(赤羽-大宮間、武蔵野線の一部)かかっているのに対し、静岡県にはそういうのすらありません。県内に富士山や伊豆、奥大井、浜名湖など周遊指定地はたくさんあるのになんとも不思議です。

さて、関西地方には「北近畿ワイド」と「南近畿ワイド」。
近畿圏住みのよんかくですが「北近畿ワイド」を東京出張の帰りに使ったことがありました。これのおかげで小浜線と範囲内のJRバス全線完乗を果たし、加えて夜行急行「だいせん」で一夜を明かす(鳥取112→552篠山口)というアホなことまでやってしまいました(大汗
旅行の終点となった大阪駅から東京都区内までの復路は乗車権利放棄となりましたが、それでもギリギリ元は取れたのではないかと自負?しております。


「南近畿ワイド」の自由周遊区間は「関西本線亀山-湊町以南」のみ。昔の天王寺鉄道管理局を知る人なら「やっぱり天鉄はええかげんやなぁ」と思うかも知れません(笑)が、索引地図をよく見ればこの1行で必要十分だとわかります。
紀勢本線和歌山市-紀和間が除かれているのはこの区間内に南海電鉄との国社分界点があり、和歌山市駅は南海の所属だったからです(JR化後の分界点-和歌山市間は南海が線路をJR西に貸し出す形でJR西の第一種鉄道事業区間とされ、分界点は廃止)。

「城崎・天橋立ミニ」は「北近畿ワイド」のシングルカット盤で、「越前・若狭湾ミニ」は福井県と石川県にまたがる横長の自由周遊区間です。
その下の「京阪神ミニ」は「東京ミニ」と同様、東京から自由周遊区間東端の草津までの往復運賃(7,800円)に1,500円プラスで京阪神のみならず奈良、和歌山、湖西線堅田まで行ける乗り得きっぷでした。東京発「京阪神ミニ」と大阪発「東京ミニ」はどちらも9,300円ですが、自由周遊区間は「東京ミニ」の方がやや広いように感じられます。
ルート周遊券は伊勢、南紀、三河湾を回る3種類。「603 伊勢・三河湾」は愛知県伊良湖と三重県鳥羽との間をショートカットする「伊勢湾フェリー」利用のダイナミックなコースです。サブルート「651 瀞・湯ノ峰」には瀞峡のウォータージェット船がコースに組み込まれていたと思われますが、水害による被害やコロナ禍の影響により現在は無期限運行休止中で、非常に残念なことです。

今回はこれにて。
次回は山陰・山陽・四国・九州地方を周遊してまいります。