うめきた preview

私はクジ運というものが全くない奴でして、宝くじはもちろん商店街の福引、50円のアイスバー、サイコロきっぷに至るまで「当たり」を引いた試しがないのですが、JR西のサイトで見つけた大阪駅の地下新駅見学会参加者募集に、よもや当たるまいと思いながらも応募したら当たってしまいました。
「うめきた地下探検」と銘打ち、今年3月18日ダイヤ改正で供用開始となる新大阪-西九条間の地下新線に設置された大阪駅(うめきた新駅)に初めて一般人を入れて公開するイベントです。

「うめきた新駅」は、現在「はるか」「くろしお」や貨物列車などが新大阪から大阪環状線に抜けるための連絡線として使用している梅田貨物線を地下化し、今まで大阪駅からは乗れなかった列車を大阪地下新駅に停めてしまおうという、将来の「なにわ筋線」接続を見据えたプロジェクトです。

2月5日の昼下がりに大阪駅中央南口近くの受付場所を訪れると、すでに受付を終えた4班までの人々が開始を待っていました。私は5班です。
ABCのカメラクルーも来ていて、一種異様な雰囲気です。

怪しいヘルメット軍団が蝟集しています

受付を済ませてしばらくすると、我が5班を引率してくださる社員氏から説明があります。
「ホームでは写真や動画などジャンジャン撮っていただいて結構ですが、入坑するまでのルート上は撮影をご遠慮ください」・・・そらそうでしょうな。

引率者に続いて5班の15人が一般通行人の邪魔になりながらゾロゾロ歩き、工事現場にある緊急用階段から入坑します。
階段に入ってからは撮影許可が出たので、私も撮り始めます。

案外女性の参加者が多くいました

ホームに降り立ち、まずはパネルを見ながら各工事担当者からの説明を聞きます。
従来の梅田貨物線(戸籍上は東海道本線支線)は大阪駅を全く無視して直線的に伸びていますが、地下新線はS字カーブを描いて大阪駅に接近する線形で、新駅もカーブ上にあります。

地上駅から少し離れた位置となりますが、担当氏は「東京駅の京葉線ホームよりは近いです」と力説されていました(笑

トンネルは、前後の勾配を緩和するため地表面から割と浅いところに掘られており、入坑時の階段の長さも「あ、こんなもんか」という感じでした。
「梅田」は「埋田」から来たという説は有名ですが、ここは古代には海だったところで、中・近世においても低湿地の泥田という土地でした。新駅やグランフロント等を含むうめきたエリアの町名「大深町」も元「北野村字大フケ」つまり深い田んぼの意味で、かなりの軟弱地盤であることを示唆しています。
関連事業で周辺に建築中のビルなど相当の深地下まで行くようですが…大丈夫かいな

続いて、フルスクリーンホームドアのデモが行われました。

新駅に発着する列車には1・2ドア特急車から3・4ドア車、そしてなにわ筋線開業後には南海の車両も乱入してくるため、関空・和歌山方面行の21番ホームには全ドア数に対応可能なホームドアが設置されています。
天井部の鴨居から吊り下げた親扉(戸袋兼用扉)と子扉を、大広間の襖のように自在に開閉します。

1・2ドア車用→3・4ドア車用→緊急時の全開 の順に開きます。

ホームドアの上で細長くチカチカしているデジタルサイネージは、アプリをダウンロードした乗客の行先に合わせた個別案内を表示する「デジタル可変案内サイン」の実証実験にも使用されるそうです。
発車メロディーは大阪府立夕陽丘高等学校音楽科の生徒が作曲したもので、そのデモも行われました。

ホームの西九条方先端の作業用階段で線路上に降ります。

先ほどの21番線ホームドアの裏側です。
枕木が宙に浮いたような構造となっていて、ケーブルも横切ったりしているので、足下に細心の注意を払わないとコケて大恥をかきます。(私はコケていませんが2度コケかけました 汗 

ラインカラーは環状線と同色の赤

新大阪方の終端部に到達しました。
あらん限りの照明を点灯してくれているおかげで、地上部のように遠くまで見渡せます。

地下新線は大半がカーブなので、ポイントも曲線分岐だらけです。
この内方分岐器はうめきた用の特注品らしいですが、技術面に疎い私にはどこがどう特別なのかよくわかりません。

折り返して、22番線を西九条方へと戻っていきます。
22番線と23番線にはおおさか東線の折り返し列車が入線するので、双方向に出発可能な信号機の配置となっています。

西九条方の終端部まで戻ってきました。
ここまであっという間のように思っていたら、入坑してからすでに1時間以上経過していました。
この少し先に幅広の函体部分があり、記念撮影ポイントとなっています。

こんなボードも用意されていて、

ボードを持ってここ↓を背景に立てばスタッフの方がシャッターを押してくれます。

この先は単線に絞られて地上に出て、これまでと同じ環状線への連絡線に繋がっていきます。
将来は左方へカーブしながら複線でなにわ筋線に入っていくことになりますが、2031年開業までまだまだ先は長いです。

梅貨線経由の列車は2月13日から地下新線経由となり(新駅は通過)、新大阪方からの複線を単線に絞る梅田信号場は廃止されるため、3月18日の正式開業までは新駅が梅田信号場の代替施設となります。
また、現在の梅貨線に介在する2か所の踏切のうち、地下化によって阪神高速梅田ランプ西側の西梅田1番踏切は除却されますが、環状線の高架に向かって登り始める地点にある浄正橋踏切は盤下げ施工のうえ存続します。

地下新線の前後には22〜3‰の勾配が存在するため、貨物列車は後部補機(EF210形桃太郎)を伴って走行することになります。このため、吹田区の機関士数名が広島へ派遣されてセノハチで補機運転技術の研修を受けたそうです。
貨物列車が走る地下線はいくつかありますが、地下の旅客駅を通過するというのは案外珍しいのではないかと思います。

随所に新技術が導入される一方で貨物列車の補機連結というレトロさなど、話題には事欠かないうめきた新線。
新しい鉄路というのは、嬉しくも心強いものがあります。