新明解通票辞典

キャリア スタフ タブレット  通過授受 通券 通票 通票受器 通票折返使用 通票授器 トークン 併合閉塞 連査閉塞式 連動閉塞式   

キャリア【carrier】通票授受具。通票を収納するバッグに大きな輪(直径20〜40cm程度)を取り付けたもの。皮革製で、輪の芯にはワイヤーが用いられている。円盤状の通票は通常、このキャリアに収納した状態で取り扱われる。通票そのものを知らなくても、駅員と運転士の間でキャリアを受け渡しする光景を見たことのある人は多いはず。この大きな輪は通過授受時の便を考慮したものだが、通過授受がほとんど消滅した現在はシンボル的な意味しか残っていないものと思われる。

スタフ【staff】通票閉塞機を使用しないスタフ閉塞式で使用される通票のこと。元来は「杖、棒」の意味。現在のスタフはほとんどタブレットと同じ円盤状のもの(材質はアルミやプラスチック等もある)が使われているが大昔の通票は棒状で、リレー競走のバトンのような棒の先に金属板(○□△)を取り付け、その金属板の形で種別を判別していた。棒状通票はかつての地方私鉄などで多く使用されていたが次々と姿を消し、現在は津軽鉄道と名古屋鉄道築港線のみで現役であり、鉄道史の生き証人ともいえる存在となっている。
なお、運転士が使用する運転時刻表のことをスタフと呼称する場合があるが、当サイトでスタフといえば通票のスタフを指すのでご注意願いたい。

タブレット【tablet】通票閉塞機を使用するタブレット閉塞式における通票のことだが、広く通票一般を指す場合もある。直径10cm、厚さ1cm弱の真鍮製の円盤。元来は「錠剤」等の意味で、形状の類似性から。

タブレット折返使用【たぶれっとおりかえししよう】タブレット閉塞式において、列車から駅に渡されたタブレットをそのまま対向列車に渡す取扱い。本来、駅に到着したタブレットはその駅のタブレット閉塞機にすみやかに収納し、タブレットが外に全く出ていない状態を一旦作ってから次の閉塞作業を行う、というのが原則である。しかし列車の行き違いがある場合、タブレットを収納してまた閉塞をやりなおしてタブレットを出す、という作業をいちいちやっていたのでは作業効率が悪く、時間もかかる。この場合、取扱いにかかる時間が5分以内であれば、列車から受け取ったタブレットを閉塞機に戻すことなく対向列車に渡して出発させるというスタフ閉塞式的な取扱いが行われる。この場合の閉塞作業は、タブレットを折返使用する列車すべてについて一括して閉塞をとる形となり、折返使用中は両駅の閉塞機に「タブレット折返使用中」の札を掲示して一時使用中止状態とする。

玉【たま】通票を広くこう呼ぶ。主に現場での符牒。→トークン

通過授受【つうかじゅじゅ】列車の通過駅において、走行しながら通票の受け渡しを行うこと。通票の受け渡しは列車を駅に停車させて行うのが原則だが、急行・特急などが通票扱い駅を通過する場合は、駅ホーム上に建植されている通票受器に運転士が走行しながら通票(キャリア)を引っ掛け、同じく駅の通票授器にセットされた通票(キャリア)を取り去っていく。俗に「投げ渡し」「すくい取り」と言われていた。かつては各地で当たり前に行われていたが、自動閉塞化の進展等によって急速に姿を消し、JR上からは1997年、因美線智頭−東津山での急行砂丘を最後に完全消滅した。


通券【つうけん】票券閉塞式において使用される通票代わりの列車運転許可証。縦10cm×横7cm程度の紙製カードで、通常は通券箱に収納されている。続行運転の必要のある時、駅長は通券箱に通票を挿入して解錠ののち通券を一枚取り出し、日付・列車番号等を記入のうえ列車に携帯させる。なお、駅長は通券を運転士に交付する際に通票も同時に提示しなければならない。そして次駅に到着した通券には大きく×印がつけられ、再使用できなくなる。

通券(イメージ)

通票【つうひょう】鉄道の単線区間において、一閉塞区間内に一列車しか運転を許さないために列車に携帯させる運転許可証票。JR以前の国鉄時代は規則上タブレット閉塞式を「通票閉塞式」、スタフ閉塞式を「通票式」と呼称し、「通票」という言葉はタブレット・スタフの区別なく使用されていたが、現在では厳密には票券閉塞式で用いられる通票のみを「通票」と呼称しているようである。ただし当サイトではタブレット・スタフ・通票の三者の総称として「通票」という語を使用しており、現在の鉄道関係法規や規則等における用語とは一致していないことを付け加えておきたい。

通票受器【つうひょううけき】通過列車が通票を駅に渡す時に用いる補助用具。前駅から持ってきた通票のキャリアをこれに引っ掛けてそのまま通過する。受器の形状で最も多いのは細い棒が渦巻き状になっている「スパイラル」(俗に「蚊とり線香」)と呼ばれるものだが、近年まで因美線で使用していたものは垂直ポールの先に横にアームが突き出た形になっており、そこに引っ掛けるとキャリアを保持したままアームが下に垂れ下がるという、メカニックな構造のものであった。→通過授受通票授器

通票授器【つうひょうさずけき】通過列車が通票を駅から受け取る時に用いる補助用具。列車はここにセットされた通票のキャリアを取り去って通過して行く。これは地方ごとにさまざまな形状のものがあった。→通過授受通票受器

トークン【token】通票を広くこう呼ぶが、最近はあまり聞かない。元来は「記念品、代用貨幣」の意味。かつては連査閉塞式連動閉塞式などの通票を用いない非自動閉塞方式を「トークンレス」と言っていた。→

併合閉塞【へいごうへいそく】非自動閉塞線区において、2以上の閉塞区間をまとめて1つの閉塞区間とすること。A−B−Cの3駅と2つの閉塞区間がある場合、B駅での列車交換がない時間帯に閉塞区間をまとめてA−Cの1閉塞区間とし、B駅の運転扱い業務を休止する。深夜早朝などの列車密度の低い時間帯に駅業務を省略することにより、人員配置の効率化を図ることができる。連査閉塞式線区で併合閉塞を実施した場合の閉塞方式は連査閉塞式のままだが、それ以外のスタフ、票券、タブレット、連動閉塞式線区では票券閉塞式が用いられる(例外もある)。

連査閉塞式【れんさへいそくしき】非自動閉塞方式の一種。タブレット閉塞式の考え方を一歩進めて、通票を用いないいわゆる「なし運転」ができるように開発された閉塞方式。駅の上下場内信号機付近に短小な軌道回路を設置し、それを列車が踏むことによって駅の閉塞機の表示盤に、隣駅までの区間内の列車の有無が表示される。この表示に従って駅長同士で閉塞作業を行い、信号てこを操作する。連査閉塞式は閉塞区間における列車の有無が閉塞機の表示で確認できるため、通票のように閉塞を証明する物的証拠を使う必要がない。通票扱いの機会の多い線区、寒冷地や豪雪地の線区など通票扱いに支障のある区間に多く導入されたが、のちに開発された特殊自動閉塞式への改良が容易だったため急速に姿を消していった。現在JR旅客線上では山田線盛岡−宮古間で使われているだけである。
なお、連査閉塞式線区で
併合閉塞を実施した場合も連査閉塞式で閉塞が行われるが、その場合は駅務を休止する駅で閉塞機の配線を操作し、併合された閉塞区間の両端の駅の閉塞機同士を直接つなぐ配線に変更される。

連動閉塞式【れんどうへいそくしき】非自動閉塞方式の一種。原理は連査閉塞式とほぼ同じ「なし運転」方式だが、連査閉塞式が駅の両端に短小な軌道回路を設置しているだけなのに対し、当方式では隣駅場内信号機までの閉塞区間全体にわたって連続した軌道回路を形成している点が異なっている。連査閉塞式よりも工事費がかかるうえ、少し改良すれば自動閉塞化が容易なため、JR旅客線上からは早々に姿を消してしまった。
なお、連動閉塞式線区で
併合閉塞を実施した場合は票券閉塞式が用いられるため、通常は「玉なし運転」ではあるが併合時には列車は通票を携帯して走行することとなる。