これがタブレット閉塞機だ!

 
むかしむかし、単線線区の駅の事務室に真っ赤に塗られた機械が置いてあるのを見たことないですか? それがタブレット閉塞機です。
 列車を迎える時間が近づくと、駅では閉塞作業を行います。駅員さんが慌ただしく動き、「チンチン」「ボンボン」という音が鳴り響きます。
 タブレットを取り出し、信号やポイントを変えて列車の到着を待つ間の、ピンと張り詰めた緊張感のようなものが、待合室の乗客にも伝わってきたものでした。
 
 ここではタブレット閉塞機のしくみと取扱いをご紹介し、タブレット閉塞式がいかによく考えられた保安方式かをご覧頂きたいと思います。

 末吉町鉄道資料館にて 


タブレット閉塞機のしくみ (以下の写真はいずれも2000/8/12交通科学博物館にて)

タブレット閉塞機は奥行きのある赤い箱で、その色から「お稲荷さん」とも呼ばれています。この中にタブレットが納められており、隣駅のものと2台一対となっています。その2台が配線で繋がっており、電話プランジャー(ボタン)を操作してタブレットを取り出します。

閉塞機には上下2つの引手(スライダー)が付いており、隣駅から到着したタブレットを収納する時は上部引手を引き出してタブレットを嵌(は)め込み、押し込みます。また、閉塞作業後に下部引手を引き出せば、円形の穴に嵌まったタブレットが取り出せます。

検電器は閉塞作業中の電気の流れを示すもので、これを見ながらプランジャーや引手を操作します。また電鈴の音で通信状況を把握しながら閉塞作業を進めます。


これは上部引手を引き出したところの拡大写真です。スライダーの穴の径と厚みがタブレットと同じになっていて、タブレットをポコンと嵌め込むようになっています。またスライダーの穴の内側には出っ張りが付けられており、それとタブレットの切り欠きが合わないと嵌め込むことができません。つまり、種別の異なるタブレットは収納できないようになっています。


電鈴のアップです。電鈴には種類があって、このページの先頭の末吉町のものは「チンチン」と鳴るタイプ、これは「ボンボン」と鳴るタイプです。このほかにも「カンカン」という感じの音がするものもありました。大抵の駅には上り方面、下り方面両方の閉塞機が並んで置かれているので、混同を避けるために音色を分けています。


いちばん下に下部引手のつまみが見えます。残念ながら引き出したところを写すことが出来なかったのですが、タブレットを取り出す時などはこの引手を引くことになります。なお、引手の上に四角い窓がありますが、これは中にストックされているタブレットの状況を見るための覗き窓です。



閉塞の方法

ここで、A駅からB駅へ123D列車を運転する場合の閉塞作業を見てみましょう。

A   駅

 

B   駅

送信用プランジャーを3回押す

電鈴が3回鳴る(チン、チン、チン)

送信用プランジャーを3回押す

   

電鈴が3回鳴る(ボン、ボン、ボン)

閉塞用電話でB駅に連絡「123D閉塞」

   

A駅に返答「123D閉塞承知」
     
送信用プランジャーを2回押す(閉塞の合図)

電鈴が2回鳴る(チン、チン)

送信用プランジャーを2回押す(承認の合図)

   

電鈴が2回鳴る(ボン、ボン)

送信用プランジャーを押し続ける

   

検電器が「半開」を指す

その間に解錠用プランジャーを押しながら下部引手を引き出す(半分しか引き出せず、タブレットは取り出せない)…これによって電気回路が構成される

送信用プランジャーを押し続ける

   

検電器が「全開」を指す

その間に解錠用プランジャーを押しながら下部引手を引き出す(全部引き出せ、タブレットが取り出せる)

送信用プランジャーを1回押す(異状なしの合図)

(この後、列車が定時に発車すればもう一度送信用プランジャーを1回押す(定発合図))

 

電鈴が1回鳴る(チン)

<閉塞完了>


文字で書くとちょっとややこしそうですが、この一連の作業を現場ではわずか1分程度でやってしまうそうです。なお、上の閉塞完了時点ではA駅閉塞機の下部引手は全開、B駅閉塞機の下部引手は半開になっています。つまり、下部引手を見れば閉塞の状況を判別することができるわけです。

取り出したタブレットをキャリアに入れて列車の運転士に渡し、出発信号を進行現示に変えれば発車オーライ。

 

半開を指している検電器


閉塞解除の方法

123D列車は無事にB駅に到着しました。A駅から持ってきたタブレットがB駅長に渡されると、すみやかにA駅−B駅間の閉塞を解除しなければなりません(折返使用の場合を除く)。

B   駅

 

A   駅

列車から受け取ったタブレットをキャリアから出す

閉塞機の上部引手を引き出してタブレットを嵌め込み、引手を押し込む

半開状態の下部引手が押し込めるようになるので、押し込む

送信用プランジャーを4回押す(閉塞解除の合図)

   

電鈴が4回鳴る(ボン、ボン、ボン、ボン)

送信用プランジャーを4回押す(解除承認の合図)

   

電鈴が4回鳴る(チン、チン、チン、チン)

送信用プランジャーを押し続ける

   

解錠用プランジャーを押す(電気回路が構成される)

全開状態の下部引手が押し込めるようになるので、押し込む

送信用プランジャーを1回押す(解除完了の合図)

   

電鈴が1回鳴る(チン)

<閉塞解除完了>

 

閉塞解除が完了すれば、再び閉塞作業を行うことによってどちらの駅からでもタブレットを取り出すことが可能になります。通票のある側からしか列車が出せないスタフ閉塞式票券閉塞式と違い、自由度の高い運転ダイヤを組めることがタブレット閉塞式の長所と言えます。

なお、隣駅から到着したタブレットを5分以内に交換列車に渡す場合は、閉塞機に戻さずそのまま折返使用ができます。ただしこの場合は、折返使用に関わる列車すべてについて一括して閉塞を行うこととし、閉塞機には「タブレット折返使用中」の札を掛けて一時使用中止状態とします。


上下で運転本数の違う場合
タブレット閉塞機は、2台1組であわせて24個のタブレットを収納しています。ところが、上りと下りで列車の運転本数が違う線区では、タブレットが一方の駅に片寄ってしまうという現象が起きてきます。

例えば上記のA駅→B駅の列車本数が1日10本、B駅→A駅が同じく11本としますと、毎日1個ずつA駅の方にタブレットが溜まっていき、いずれA駅の閉塞機はオーバーフローとなり、B駅の閉塞機は空っぽになってしまうでしょう。

この場合は、A駅で一定の時間ごとに閉塞機の鍵を開け、タブレットを余剰数枚分取り出してB駅に運び、B駅の閉塞機に移し替える「調整」という作業が行われます。もちろん、正規の閉塞手続きを踏んで取り出されたタブレットとは厳格に区別され、混同のないように注意を払って陸送されます。列車で運ぶ場合は、棒にタブレットを串刺し状態にして鍵を掛けて、必ず係員が手持ちで運ぶようにしているそうです。