信号場とは…
一筋縄でいかないその定義

信号場のようで信号場でない(ベンベン)

ことほどさように信号場にはいろんな形態のものがあるわけですが、逆にこのような形態をしていても信号場とはみさないものがあります。

<駅の構内扱いとなっているもの>

 JR名松線は 三重県の松阪駅で紀勢本線から分岐している地方交通線ですが、実際には松阪から紀勢本線のレールをしばらく走り、約3kmほど亀山方へ行ったところにあるポイントで初めて分岐します。で、この分岐点が信号場かというとそうではなく、なんと松阪駅構内の扱いとなっているのです。ですから、この分岐点を防護する信号機は松阪駅の場内信号機ということになります。機能面では山口県の森ヶ原信号場と同様の立派な「分岐型信号場」なんですが、なぜか半人前の扱いとなっています。

 このほか、千葉県のJR成田線成田−久住間にある成田空港方面への分岐点(成田から2.1キロ地点)は成田駅構内扱い、また山形県の今泉駅近くにあるJR米坂線と山形鉄道の分岐点も、かつては白川信号場という独立した信号場でしたが、現在は今泉駅構内扱いです。

 また、これはやや反則技に近いですが、島根県のJR木次線出雲坂根駅の三段式スイッチバックの2段目折り返し点(駅から登ったところにある所)には両方向への出発信号機が設置されていて信号場の仲間のように見えます。しかしこれも出雲坂根駅構内という扱いです

その他の駅構内分岐の事例 (ashiwodi様のサイト「鉄路ノ景」にリンクしています) 
田川伊田駅構内 日田彦山線・平成筑豊鉄道田川線の分岐部分
香春駅構内 日田彦山線・旧添田線の分岐部分
吉塚駅構内 篠栗線・旧勝田線の分岐部分


<肝心かなめの信号機のないもの>

 高知県のとさでん交通伊野線朝 倉−伊野間は単線で、軌道線では国内唯一となった「通票式」という保安方式を使用しています(軌道はその運転特性上「閉塞」の概念がないので「通票閉塞式」等とは言いません)。朝倉と伊野のほぼ中間点、八代通電停と中山電停の間には電車同士が行き違いできる短小な複線部分(中山交換所)があり、日中の全電車がここで行き違いをしていますが、見かけ上「交換型信号場」であるこの交換所は「信号場」の定義にあてはまらないものと考えます。
 なぜかと言えば、信号場につきものの「信号機」が全く存在しないからです。

 軌道(路面電車は低速運転のため非常時にもすぐに停車でき、危険を回避できる可能性が高いことから、通票式区間では信号機の設置は義務付けられていません。ここでは、交換相手の電車から通票を受け取ることによって次の区間の安全性が担保される、ということになっています。
 なお、軌道線であっても通票式でない単線区間では、通票に代わる保安方式として信号機を設置しなければなりません。

では、分岐点や交換所が信号場であるか否かを判別する方法はあるのでしょうか??

 原則はその分岐点や交換所の分岐器(ポイント)を防護するための独立した信号システムがあるかどうか、ということでしょう。しかし実際は、その信号機が独立したものなのか他停車場の信号システムの一部なのかは、外見上判断が困難です。

 結局のところ、鉄道事業者がその場所を独立した信号場(所)として扱っているかどうか、に尽きると思います。こうなると単に呼び方の問題ということにもなりかねないのですが、我々外部の人間にとってはそれしか判別の手がかりがありません。このへんも、信号場の定義を曖昧なものにしている一因のように思われます。

(参考)信号場における信号機設置パターン

 信号場や交換可能駅では最低これだけの信号系統を備えている必要がある、という最大公約数的な設置パターンを下表に掲げます。

分類
信号機の配置例
場=場内信号機 出=出発信号機
(遠方、入換等の信号機は省略)
メ   モ
交換型
(一般)
場内信号・出発信号が上下1基ずつ
交換型
(一線スルー)
双方向における交換・待避を行うため
場内信号は本線用・副本線用の2基設置
分岐型 分岐点を防護する場内信号機を3方向に設置
出発信号機は存在しない
分岐交換型  
複線始終端型 複線側に出発信号、単線側に場内信号を設置
複線待避型 交換型(一線スルー)を上下に2つくっつけ
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