旅の始めは個室寝台車

1日目(2007/8/18・土)
自宅−新大阪−長崎ー諫早ー土井崎信ー県界ー里信ー多良ー肥前鹿島ー嬉野温泉ー彼杵ー佐世保

4年ぶりの九州だ。九州新幹線が未乗だし、川原木・赤瀬川両信号場の再訪(南九州へろへろ紀行参照)も懸案事項になっていたところだ。特に川原木などは夢にまで出てくる始末で、早々にカタを付けたい気持ちもあった。
前回の九州旅行は往復飛行機だったので、今回は往復鉄道利用の「純鉄の旅」にしてみることにした。復路の新幹線利用は動かしがたいところだが、往路は久々の寝台列車を奮発してみよう。特急料金と寝台料金は安くないけれど、もう遠い思い出となってしまわないうちに乗ってしまわないと…と早速窓口に赴くと「あかつき」のソロがひょっこり取れた。開放型B寝台と同一料金でありながら居住性は格段に上だが、2週間前になってもソロに空きがあるという現実にちょっと寂しさも感じた。


しかしいつまで走り続けるのやら…(長崎)

新大阪のホームに「なは」4両と「あかつき」6両の併結編成が入線。指定された8号車7番は階下室なので、階上室への階段部分がボコッと室内にせり出しているのがやや目障りだ。でも横になるには全く支障がないし、何よりも他人の目を気にせずに着替えたり外を見たりできるのが非常にありがたい。流れる車窓風景に見入りながらいつ寝てしまったのかわからないが、倉敷以遠の記憶がない。
翌朝は鳥栖での分割にまったく気づかず、肥前鹿島付近で目が覚めた。現地訪問予定の里・土井崎信号場をそろそろ通過する頃だが、私の部屋は進行方向左側だったので交換設備の様子などを見ることができないまま通過してしまった。
名残惜しい「あかつき」には長崎まで乗り通し、すぐ折り返しの「シーサイドライナー」で諫早へ戻る。ワンマン仕様のキハ66系は乗務員室後ろの窓が縦に細長く、前望環境は最悪だ。トンネル内の肥前三川信号場の前望ビデオ撮影に挑むが、うまく撮れなかった。
諫早からは長崎県営バス県界行で土井崎を目指す。「県界」とはまた直球な停留所名なので一体どんな所なのか興味が湧くが、このあと土井崎から里に向かう途中に通りかかることになっている。

往年の筑豊のエースはシーサイドに働く(長崎)
バスは有明海と長崎本線に挟まれながら国道207号線を淡々と走って行く。今日は朝から日差しがきつくて、とても暑い。
40分ほどバスに揺られ、県界の2つ手前である土井崎停留所で下車。すぐ目の前が土井崎信号場だ。4年前、悪路に悩まされた秘境信号場訪問を思い出しつつ、こんなに楽に信号場に到達できていいのだろうかと恐縮してしまった。土井崎に30分ほど滞在したのち、国道を県界方面に向かって歩き始める。
吹き出る汗をタオルで拭いながら15分ほど歩き、川を渡る手前で国道をそれて細道に入ると小さな集落と橋が見えてくる。その川が長崎県と佐賀県の県境をなしており、県界停留所はその橋のたもとにあった。
橋を渡って佐賀県側の突き当たりに小さな商店があり、その前にはもうひとつの県界停留所がある。こちらは佐賀県を地盤とする祐徳バスの停留所だ。県境の橋を挟んで両側に別事業者の「県界停留所」があるわけで、私がここまで歩いてきたのも祐徳バスに乗るためであった。徒歩連絡のような形にはなっているが、通しの乗客などほとんどなさそうだし、両社の接続もあまりよくない。

さすがに県営バスは県界を越えられない?

橋を何度も往復して県界を味わっているうちに祐徳バスがやってきて転回場で停まり、前面の方向幕が「県界」から「鹿島バスセンター」に変わった。発車時刻にはまだ早いが、気が遠くなるほど暑いので冷房の効いたバスに早く乗せてくれないかなと思う。持参の汗拭きタオルは既に3枚もぐしょぐしょになってしまった。
県界を発車したバスは私ひとりを乗せて、再び有明海沿いの国道を北へ向かう。肥前大浦駅を過ぎた所に、有明海唯一の海水浴場という「白浜海水浴場」があり、次の目的地である里信号場訪問前にちょっとひと泳ぎしてもいいなと、実は海パンも持参している。地図を見ると、海水浴場に最も近いバス停は里停留所の1つ手前の野上というところのようなので、1停留所分歩くだけで里にたどり着けると、最初はそう思っていた。
ところが野上停留所はほとんど峠の中腹みたいなところで、確かに直線距離では近いものの海岸とは高低差がかなりあり、何よりもバスの窓から見る限り海の方へ下りる道が見あたらない。直感的に私は野上下車を取りやめ、そのまま里まで乗ることにした。


小駅の素朴な交換風景(彼杵)
里停留所は里信号場の長崎方の端にあたるところで、海沿いに湾曲した信号場のほぼ全景が望める位置にある。非常に眺めのよい信号場だが、とにかくこの暑さには耐えられない。汗拭きタオルは既に本日5本目に突入している。しかもバスの時刻の関係で、里ではこの炎天下を2時間も過ごさなければならないのだ。「かもめ」の交換風景を撮ってもまだ時間が余るし、頭もくらくらしてきたのでヤバいと思い、信号場と国道に挟まれて建つ和風レストランに飛び込んでアイスコーヒー1杯で40分粘った。
「かもめ」同士の交換をもう一度カメラに収めて、レストラン近くの休石(いけじ)停留所から再び鹿島バスセンター行に乗車。これから肥前鹿島へ出て嬉野温泉へ向かうのでこのまま終点までこのバスに乗っていてもいいのだが、バス代を浮かすため多良から長崎線に乗り換えようと思う。バスは多良駅前まで乗り入れてくれないので、国道沿いの太良老人センター前で下車し、10分近く歩いた。
肥前鹿島に着き、駅前の鹿島バスセンターで嬉野温泉行を待つ。やってきたバスは今日初めての運用に就くのか車内は蒸し風呂状態で、、同乗の高校生らも口々に「暑い暑い」と窓を開け放つ。バスは時折県道を外れて細い旧道に入り、対向車に道を譲ったり譲られたりしながら集落を丁寧に縫いながら走る。

上から押さえつけて食べるのがツウだそうだが…
嬉野温泉では待ち時間を利用して一浴、と思っていたのだが、祐徳バスの嬉野温泉停留所はなんとも中途半端な場所で、元湯を探し歩くうちあえなくタイムアウトとなってしまった。
次に乗るJRバスの乗り場は嬉野温泉駅という、建物は古いが立派なターミナル。昔から国鉄バスの主要停留所には、鉄道と接続していなくても「駅」を名乗る所が多く、バスは鉄道の補完的役割という意識が強かったのだろうが、路線廃止が進んだ今のJRバスでは「駅」は僅少となってしまったようだ。ここから大村線彼杵駅へ向かい、今日2度目の「シーサイドライナー」で佐世保に着いて今日はここまで。
ホテルに荷物を置いて晩飯用の「佐世保バーガー」を買いに行く。客の多い時には1時間ぐらい待たされることがあるとも聞いていたが、あらかじめネットで調べてあった2つの店ではすんなり買えた。ホテルに戻って早速かぶりついてみると、肉やベーコンが横からはみ出ていたりマヨネーズがにゅるっと手に付いたりしてマクドその他のよりも豪快は豪快だが、食べてしまえば特にどうということもなく、むしろもう1個買っておけばよかったかな・・・などと思ってしまったのは単に私の食い意地が張っているからなのだろうか。
2日目につづく